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コロナ乗じた医療改悪 公的医療を市場化 企業の儲けに

全国保険医新聞2020年7月5日号より)

 

 コロナ対応に乗じて、政府は初診からのオンライン診療の恒久化やスイッチOTC薬の拡大を図る動きを進めている。不明瞭な形での検証、医療者軽視の検討は認められない。

 

医療者の声反映を

初診オンラインの恒久化狙う

 コロナ感染拡大の下、受診機会を保障するとして初診からオンライン診療を認めた時限的特例の取り扱いについて、コロナ収束後を見据えて恒久化を狙う動きが出ている。5月の国家戦略特区諮問会議では、内閣府は、特例について「緊急事態宣言の解除後も引き続き効力を有すると確認する」とともに、年内めどに「医療の現場に定着すべき措置」について検討を行うと提案した。当日、兵庫県養父市より、インフルエンザ等感染症で初診からのオンライン診療の特区実証、対面同等の診療報酬の適用など具体的な提案も出されている。6月の同会議でこれらの提案について検討を開始した。
 並行して、政府の規制改革推進会議は6月、「デジタル化がデフォルト(標準設定)」として、病院・診療所という「場」にとらわれずオンライン診療を進めるよう提言した。同月の経済財政諮問会議でも、西村康稔経済再生担当相は、オンライン診療は「後戻りさせない強い決意の下で進めていきたい」と述べるなど官邸挙げてオンライン診療の定着・拡大を図る構えだ。
 今国会で成立したスーパーシティ法(改正国家戦略特区法)では、一部企業が患者・住民の個人情報を一元管理して、医療・交通・金融サービスなど複数の規制を同時に緩和して「丸ごと未来都市」をつくるとしている。「必要な診療と薬がどこにいても手に入る」としてオンライン診療も想定する。コロナに乗じて公的医療サービスを企業の儲け先に変えていく「ショック・ドクトリン」だ。

 

学会・医療者主体に検証を

 時限的特例について、日医は「地域医療の崩壊を防ぐための極めて特例的な対応」と強調しており、十分な検証が必要としている。特例下で収集された個別事例やレセプト等で示される医療の質(有効性、患者の満足度など)は感染リスクと比較したものであり、平時の対面診療との比較は困難であり、データの取り扱いには注意が必要だ。
 コロナ収束後を見据えたオンライン診療は平時での対面診療と比べて評価される必要がある。2020年度改定でオンライン診療の対象疾患に追加された「(慢性)頭痛」では、学会から提出されたエビデンスを厳格に評価するランダム化比較試験等により示された対面診療と同等程度の安全性・治療効果や学会の治療指針を踏まえ、中医協で検討し保険適用に至っている。オンライン診療の取り扱いは、安全性・有効性に鑑みて、対象疾患に関わる医師や学会等が実施した調査・分析結果に基づき、医療者が参加するオンライン指針検討会や中医協で判断することが肝要である。
 議員に医療者がいない特区諮問会議で検討が進められることは問題が多い。あくまで診療は直接の対面が基本であり、とりわけ初診のオンライン診療の恒久化は論外というべきだ。

 

スイッチOTC大幅拡大狙う

 規制改革推進会議では、コロナ禍にも乗じて、「セルフメディケーションの促進、医薬品産業の活性化」として、薬局・薬店等で処方箋なしに購入できる医薬品(OTC薬)の拡大も検討している。特に、医師が処方する医療用医薬品について薬店店頭等で販売できるスイッチOTC薬への切り替えを強く進めるよう提言している。5月に示された「スイッチOTC選択肢の拡大に向けた意見」では、スイッチOTC化の可否を事実上判断している評価検討会議について、▽医師・薬剤師等の医療専門職の委員を3分の1以下に大幅に減らし▽委員長(現在は医師)は公益委員に代え▽全会一致の原則を見直した上▽親会議である薬事・食品衛生審議会に意見を述べる機関に格下げするよう求めている。また、スイッチOTC化が可能な疾患領域、患者の状態や薬局・薬剤師の役割について具体化した上、数値目標を定めて進捗状況を管理するなど「より一層のスイッチOTC医薬品の提供」を図るよう主張している。
 国民の利便性等を理由としたスイッチOTC化の拡大は、重篤疾病や副作用の見落としなど健康被害の増加が強く危惧される。今でもスイッチ直後のOTC薬について店頭販売に際して求められる▽購入者が使用者本人かどうかの確認がない20%▽書面等を使った情報提供がない33%▽情報提供内容を理解したかどうかなど確認がない30%弱―などルール遵守が徹底されていない(2019年度医薬品販売制度実態把握調査)。まずはルール順守の徹底が求められる。政府の改革工程表に定めるように、スイッチOTC化した医薬品は公的保険より外すべきとの議論も繰り返し出るなど注意が必要だ。

以上

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