コロナ乗じた医療改悪 公的医療を市場化 企業の儲けに
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時限的特例について、日医は「地域医療の崩壊を防ぐための極めて特例的な対応」と強調しており、十分な検証が必要としている。特例下で収集された個別事例やレセプト等で示される医療の質(有効性、患者の満足度など)は感染リスクと比較したものであり、平時の対面診療との比較は困難であり、データの取り扱いには注意が必要だ。
コロナ収束後を見据えたオンライン診療は平時での対面診療と比べて評価される必要がある。2020年度改定でオンライン診療の対象疾患に追加された「(慢性)頭痛」では、学会から提出されたエビデンスを厳格に評価するランダム化比較試験等により示された対面診療と同等程度の安全性・治療効果や学会の治療指針を踏まえ、中医協で検討し保険適用に至っている。オンライン診療の取り扱いは、安全性・有効性に鑑みて、対象疾患に関わる医師や学会等が実施した調査・分析結果に基づき、医療者が参加するオンライン指針検討会や中医協で判断することが肝要である。
議員に医療者がいない特区諮問会議で検討が進められることは問題が多い。あくまで診療は直接の対面が基本であり、とりわけ初診のオンライン診療の恒久化は論外というべきだ。
規制改革推進会議では、コロナ禍にも乗じて、「セルフメディケーションの促進、医薬品産業の活性化」として、薬局・薬店等で処方箋なしに購入できる医薬品(OTC薬)の拡大も検討している。特に、医師が処方する医療用医薬品について薬店店頭等で販売できるスイッチOTC薬への切り替えを強く進めるよう提言している。5月に示された「スイッチOTC選択肢の拡大に向けた意見」では、スイッチOTC化の可否を事実上判断している評価検討会議について、▽医師・薬剤師等の医療専門職の委員を3分の1以下に大幅に減らし▽委員長(現在は医師)は公益委員に代え▽全会一致の原則を見直した上▽親会議である薬事・食品衛生審議会に意見を述べる機関に格下げするよう求めている。また、スイッチOTC化が可能な疾患領域、患者の状態や薬局・薬剤師の役割について具体化した上、数値目標を定めて進捗状況を管理するなど「より一層のスイッチOTC医薬品の提供」を図るよう主張している。
国民の利便性等を理由としたスイッチOTC化の拡大は、重篤疾病や副作用の見落としなど健康被害の増加が強く危惧される。今でもスイッチ直後のOTC薬について店頭販売に際して求められる▽購入者が使用者本人かどうかの確認がない20%▽書面等を使った情報提供がない33%▽情報提供内容を理解したかどうかなど確認がない30%弱―などルール遵守が徹底されていない(2019年度医薬品販売制度実態把握調査)。まずはルール順守の徹底が求められる。政府の改革工程表に定めるように、スイッチOTC化した医薬品は公的保険より外すべきとの議論も繰り返し出るなど注意が必要だ。
以上