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ビニールカーテンを用いた検体採取

全国保険医新聞2020年7月25日号より)

 

 新型コロナウイルス感染症のPCR検査は、検体採取のたびに使用した手袋や装置などの消毒をしなければならず、医療従事者の重い負担となっている。岐阜県羽島郡医師会会長の松波英寿氏は、独自のカーテンを用いて安全な検体採取を実践している。その方法について寄稿してもらった。

 

3重の飛沫防御対策

図1 PCR検査用手袋付カーテン
(Gifu CARTAIN)
検査担当医師が、腕を入れる手袋部分があり(ア)、
検体を取り出す小さな穴がついている(イ)
図2 カーテンの使用方法
受付で車の窓をビニールカーテンで覆い、
その後窓を開ける
図3 飛沫防御策
3重ブロック。@頭袋、AGifu CARTAIN、
B扇風機による送風
図4 検体採取後の回収
外来診察室での使用を想定して、
衝立にGifu CURTAIN を貼り、
下方に追加の通常のビニールを貼った

 岐阜県羽島郡医師会はCOVID-19の検体採取を行う医療従事者の感染機会を減らす、安全で安価な方法を実践しているので紹介したい。
 ドライブスルーで検体採取を行う場合、電話ボックスのような装置内に医師が入り、医師が隔離された状態で患者の鼻腔から検体を採取する方法が見られる。
 多くの施設ですでにこの方法が採用されているが、電話ボックスと医師が両手を挿入する手袋が、多くの装置では一体化されているため、一人の患者の検体採取が終わるたびに、医療関係者が患者さんに触れた手袋や電話ボックスの外面を消毒しなければならない。この操作は煩雑なうえ、消毒する人の感染機会が存在する。また、この方法では大人数を短時間で行うことはできない。
 一方、私たちは、帰国者・接触者外来の経験を生かし、安全に行えるドライブスルー方式の岐阜地域 地域外来・検査センター(PCRセンター)の運用を、このほど始めた。
ポイントは以下の3点である。

@  支払いも含め、一切、物のやり取りを患者と医療従事者の間で行わない(患者データはすべて事前に入手して完全予約制にする。当日必要な物品はあらかじめ紹介医を通じ患者に渡しておく。支払いはpay payか請求書による後日支払いのみとする)。
A  作業者の安全を確保させるまでは(後述のGifu CURTAINをはり、扇風機を回すまで)、車内(患者)と車外(作業者)の会話は携帯電話越しに行う。
B  3重の飛沫防御対策を行い、PPEへの患者の飛沫の付着の可能性を限りなくゼロにする。

 

特殊ビニールカーテンを使用

 Bの具体的方法は以下の通りである。
ア:ミトン型の手袋が付着加工してあり、検体回収用の穴があけてある、特殊ビニールカーテン(図1 Gifu CURTAIN 実用新案出願中 双葉産業FAX:058-388-0180で入手可能)を運転席の窓枠に貼る(図2)。
イ:検体採取時に、患者に、鼻腔の位置に相応する場所に穴をあけたビニール袋をかぶってもらう(図3の@ 頭袋)。Gifu CURTAINのミトン型の手袋越し、患者がかぶった頭袋の穴越しに検体を採取する(図3の@、A、図4)。
 医師の斜め背後から車に向かって常に扇風機で風を送る(図3のB)。
 すなわち仮に患者が検体採取時に咳・クシャミをしても、ビニール袋(頭袋)から車内に拡散する飛沫は少量であり(図3の@でブロック)、運転席にビニールカーテン(Gifu CURTAIN)が貼ってあるため車内から車外に飛散する量はさらに少なく(図3のAでブロック)、医師の斜め背部から常時風が吹くので(図3のBでブロック)、医師のPPEに飛沫が付着する可能性はゼロに近いと予測される。したがって、医師は通常のPPEに守られた上に、風、Gifu CURTAIN、頭袋に守られることになるため、PPEが汚染される可能性が極めて低くなり、PPEの着脱時のリスクが著しく軽減する。
 また、これらのビニール袋、ビニールカーテンは患者自らが回収して自宅で処分してもらうため、事務員等による物品回収に伴う事務員の感染リスクもなくなる。これらの用具を使用すれば、欠乏しているPPEの消費が節約でき、なおかつ検査センターのすべての職員の安全性が高められる。
 これから気温が高くなるが、これらのビニール袋、カーテン、扇風機を使用すれば、熱がこもる重装備のPPEを使用しなくても、快適・安全に検体採取が行える可能性が高いと考えている。

 

通常の診療でも応用可

 COVID-19に限らず、インフルエンザ等を疑う場合でも、対象患者が通常のインフルエンザに罹患しているのか、新型インフルエンザに罹患しているのか、COVID-19に罹患しているのか、検査前はわからずに検体採取を行わなければならない局面がくると思われる。つねにドライブスルーで検体採取できるわけではないので、通常のクリニックの診察でもこのカーテンが応用できると考えている。
 Gifu CURTAINの下方に追加のビニールシートとともに、診察室にある衝立に貼るだけ(あるいは今後開発予定の大型のGifu CURTAIN)であり、極めてシンプルであるにもかかわらず有用性は高いと考えている。
 Gifu CURTAINの最大の特徴は安価で使い捨てが可能であり、結果的に感染リスクが低下することである。
 ドライブスルーでの検体採取の動画はhttps://youtu.be/YzLGwQ8Kfooをご参照いただきたい。

以上

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