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コロナ禍と医療現場

診療の工夫さまざまに

全国保険医新聞2020年9月5日号より)
「コロナ禍と医療現場」特集へ

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の下、医療機関は未知の感染症への対策や、感染を恐れた患者の受診抑制など、さまざまな困難を強いられている。しかしこうした中でも、医師・歯科医師は感染防止策を行いながら地域医療の継続に尽力してきた。感染が長期化する見込みの中、奮闘する医療現場の実態を紹介する。

 

疑い患者に屋外診療も― 栃木協会  天谷 静雄

車のウィンドー越しに問診と診察。
医師(寄稿者)は完全武装で

 宇都宮市は人口52万人ながら保健所はただ1カ所。そこにある帰国者・接触者相談センターに電話相談しても「まずは最寄りの医療機関へ」と案内されて当院を受診する患者が相次ぐ。玄関入口は1つなのでガラス戸を外し待合室を仕切った隔離室へ誘導。車で来院の場合は車内で待機してもらい、医師が完全武装での屋外診療となる。コロナ感染が強く疑われた場合、病院紹介となるが、幸い当院ではまだ1例の発生もない。
 「3密」を避けるために長期処方化とオンライン診療を行い、待合室は閑散としていても電話対応で大わらわ。定期検査はできず、検診も見合わせ、重症化やがん発見の遅れが懸念される事態となった。
 栃木協会が行なった会員アンケートでは9割が患者減、8〜9割が保険収入減ということであったが、当院では5月度の対前年度で患者数が20%、保険収入が10%減少する結果となった。
 6月からは平常診療に復し、特定検診も密にならないよう予約制で実施するなど工夫して待合室にもようやく活気が出てきた。それでも長期処方やひきつづきオンライン診療を望む声もあり、対応に苦慮している。
 5月からは市医師会の協力でドライブスルー方式によるPCR検査センターが稼働し始めた。首都圏ではコロナ感染者の最も少ない栃木県ではあるが、8月5日には17人で最多となり、感染拡大が危ぶまれている。

 

対策説明で患者減らず― 東京歯科協会 早坂 美都

患者さんに渡している資料とリステリンのミニボトル

 3月下旬、世間では歯科治療が不要不急と言われ始めた頃、10年近く当院に通ってくださっている82歳女性の患者さんから、思わぬ言葉をいただきました。「巷ではコロナで歯科が怖いとか言われているけれど、口腔ケアが大切だし、万が一コロナに罹ったとしても重症化したくないので、今まで通り通院します。先生のところに通って、この10年間インフルエンザに罹ったことがないので、口の中のケアは、感染症予防にもなるのではないかと、自分なりに感じています。緊急事態宣言が出ても、先生は診療室を閉めないでくださいね」。
 その言葉をきっかけに、正確な知識と情報を、分かりやすい平易な言葉で説明し、家庭や個人で手に入りやすい身近な材料を使って感染対策することを伝えていくことを始めました。
 要点は、手洗い、口腔ケアにしぼりました。@コロナウィルスはエンベローブというたんぱく質の膜で覆われているので、膜を破壊させるためには、界面活性剤が含まれている石鹸や食器洗いの洗剤が有効。A外出後は洗面所に直行して手洗いをし、外では顔に手を触れないこと。B口腔ケアは肺炎予防に有効。
 院内のポスター掲示も大切ですが、患者さん一人一人に説明し、資料を手渡しすることで、より理解していただけたようです。手洗いの方法は、一人ずつ衛生士がデモを行いました。各ホームページより、以下の資料をダウンロードしてプリントしました。サラヤ(手洗いの順番)、リステリン(インフルエンザウィルス関係)、国立感染症研究所(コロナウィルスの模型図)、これらと含嗽剤リステリン100mlサイズのボトルをお渡ししました。
 このような努力のお陰なのか、ありがたいことに、当院では患者さんの来院数は減少しませんでした。

 

HP活用で患者数回復―香川協会 三木 武寛

 「歯科医院に行くと新型コロナウイルスに感染するリスクがある」そんな報道が出回ってから当院でも患者さんの受診自粛が目立つようになった。しかしながら、患者さん全員がご自身で十分な口腔衛生管理ができるわけではない。要介護高齢者、障がいのある人にとっては定期的管理が滞ることで健康に悪影響を及ぼすこともある。
 そこで当院ではそれまでに行っていたスタンダードプリコーションを再度見直し、感染対策の意識をスタッフ間でしっかり共有することで、患者さんに安心して受診していただけるのではと考えた。
 新たに取り入れたのはフェイスシールドの使用を徹底することや、頻回の換気、待合室の整理(共有の本などの撤去)、そしてスタッフ、患者さんの体調確認、行動確認である。体調確認は検温と問診を毎回行っている。行動確認については、香川県では過去2週間以内に県外に出た人は行動履歴を記録することになっているので、その方針に基づいて毎回患者さんの行動歴を聴取するようにした。
 そのような対策を細かくホームページに掲載したところそれ以前に比べ閲覧数が大きく増加し、受診者数もすぐに回復した。やはり患者さんは医療機関の感染対策に強い関心を寄せていると思われた。
 今回新たに取り入れた対策法は今までの標準予防に追加したものなので、たとえコロナ問題が収束したとしても今の形を当院のスタンダードプリコーションとして続けていこうと思う。

以上

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