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コロナ禍と医療現場

激変する診療環境に対応

全国保険医新聞2020年9月5日号より)

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の下、全国の会員はさまざまな困難を強いられながら、地域医療継続のため奮闘している。緊急事態宣言下で苦労しながら開業に至った歯科会員、初めてのオンライン診療を行った医科会員の状況を紹介する。

 

緊急事態宣言下の開業―富山協会 長久 宗弘

開業直前にかき集めた衛生材料が
真新しいクリニックの部屋を埋めた

 富山県内で新型コロナウイルス感染者が初めて確認された3月下旬、歯科診療所開業を約1カ月後に控えていました。感染拡大は開業準備に多大な影響があり、特に4月は精神的に追い詰められる日々でした。
 衛生材料の中でも消耗品関係が入手できない状況となっていました。本来なら注文したら翌日に入るグローブやガーゼなどが、大手通販A社の在庫はほぼゼロ。大手通販B社は毎日少しずつ在庫があり、グローブなどを片っ端から購入していく日々でした。
 開業4日前に滅菌バッグを準備し忘れていたことに気付き、4社に連絡しましたが在庫がなく、大手通販A社のショールームにあったサンプル数枚を送ってもらいました。
 また、泡ハンドソープを丸一日かけて探し回っても確保できず、固形石鹸を買おうか迷ったりしたのも肉体的・精神的に消耗しました。
 4月に予定していた内覧会を中止したため、開業1週間前もアポイントはゼロ。仮に患者が来なくても従業員の給与費を捻出する必要がありますが、雇用調整助成金を申請したくても、前年度の売り上げ実績がない当院は申請できません。開業を延期しようか、子どものいるスタッフは小学校休業等対応助成金で休ませようか…など顧問会計士と相談したほどです。多くの医療機関が利用している富山県地域企業再起支援事業費補助金や福祉医療機構の医療貸付などの融資制度も当院は対象外です。
 逆に、CTを購入した大手通販A社で開業直前に消耗品を最優先で手配していただくなど、思いがけない幸運もありました。
 保団連の休業保障制度は新型コロナウイルスに感染して休業した場合にも保障されるため、従業員の給与保障のため協会入会と同時に加入しました。新規開業の当院は公庫などの緊急融資制度の対象外ですが、保険医協会の融資制度は借入が可能なので、資金調達が必要な際は利用する予定です。
 今回のコロナショックでは、生活・社会構造が激変しています。医院経営においても今までの常識が通用せず、いかに対応できるかが求められるのではないでしょうか。

 

初めてのオンライン診療―沖縄協会 仲里尚実

オンライン診療の様子

 まさに「コロナの時代」となった。日常生活、仕事、学問、遊び、趣味の活動などすべてで行動様式の変容が迫られている。
 毎月一泊二日で南大東島診療に赴いている。南大東村には医師が一人だけの診療所しかない。島民に一人でも感染者が出たら拡大予防の対策のため島の医療はすぐに「パンク」するのが容易に予測される。
 4月に県の緊急事態宣言を受けて、「本島からの来島自粛要請」を受けた。 そこでオンライン診療を実施することにした。患者数は毎回15人前後だ。幸い通信環境は整っていた。病院の会議室に電子カルテと映像レンズ付きのパソコンをセットし事務方の相棒と待機した。現地では保健師が村役場の会議室にスカイプができるパソコンをセットした。
 私の方の画面には椅子に座った患者さんの上半身が映り、右下の小さな囲みに私の顔が映っている。現地の画面はその反対となり、私の顔がクローズアップされる。
 機械の調整中に音声が3秒ほど遅れる(タイムラグ)ことに気がついた。大したことはなかろうと初めてのオンライン診療を始めた。対面では何も気にしなかった私の口調も、電波を通すと「滑舌」が悪く聞こえるようだ。会話の内容の判断材料は音声のみである。お互いに慣れてないので画面の表情を落ち着いて読み取ることはまだできない。音声ラグにより相手がまだ聞き終えてないのに私が続けて喋ってしまい、混乱している患者の様子に私がまた慌てるということが繰り返された。そこで編み出したのは「私が質問するときには右手を上げます。手を下ろしたら自由に答えてください」。これで応答はスムーズになった。
 新しい発見もあった。対面診療では緊張した表情を崩さなかった50代の女性が、なんと最初から最後まで面白いテレビ番組を見ているがごとく笑顔であった。他の患者さんたちもなにやら楽しんでいる。気を張っているのは私だけだった。
 今後、この方式も有効に活用できそうだ。「Web会議は嫌いだ」と全国関連の会議は欠席していたが、もう許されない時代になってきた。

以上

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