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患者・家族に寄り添いながら
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(全国保険医新聞2020年9月25日号より)
(「コロナ禍と医療現場」特集へ)
新型コロナウイルスの感染拡大の下、さまざまな困難を強いられながら、地域医療継続のため奮闘する会員の姿を紹介する。
治療内容の調整も―東京歯科協会 清水 俊貴
感染防止対策には協会から分かりやすい冊子「絵で見る 色でわかる 歯科の院内感染防止対策」が出ていますので、そちらを参考にしました。ここでは、さらに私個人での取り組みを紹介します。
小池都知事が提唱した「ステイホーム」で落ちた筋肉を戻すため、朝晩歩きながら、知り合いの方々と「この状況だし、きつい時には休みながら、無理しないで元気に続けよう」と話しています。急きょ休診にしても、それを受け入れてくれる患者さんとの信頼関係が財産だと思います。
◆予約調整と治療内容
予約調整すると経営は厳しくなります。そこで、@患者さんごとに、早めの来院は可能か、処置時間はどうかなど「きめ細かい情報」を基に予約を組みます。
次に、A治療内容の再検討です。明日も同じ状況とは限りません。今治療をすべきかどうか、必要なら万一の出口を確保しつつ治療します。
例えば智歯炎症の場合、軽症では患者さんはそれに気付かないこともありますが、この冬に予想される新型コロナウイルス流行の最中に痛みが出たら大学病院は軒並み休診となるかもしれません。説明し同意が得られれば、今のうちに積極的に治療を勧めることもあります。
その患者さんの置かれた状況を考えて治療内容を再検討し、集中治療したり治療自体を延期する配慮も必要です。
◆消毒用アルコール対策
接触せずに手指にアルコール噴霧できる手圧式ボトルは好評で、使い過ぎも防ぎます。通販で購入したシンプルな装置ですがほとんど揮発もしません。高価なアルコールは手指、その他必要な場面に限り使用して、その他の部分の清拭はマイペットやクイックルワイパーを活用しています。
◆換気設備や排気回路を増設
排気関係をオーバーホールしました。機械にフランジ(立上げ部分)を取り付け、屋外に専用フィルターを介して排気できるように改修したので、汚染された空気は機械室にとどまらなくなり、再び診療室に流れ込まないようにしました。
開業医は、工夫しつつ診療を続けることが大事だと思います。
緩和ケア病棟の苦悩―香川協会 蓮井 宏樹
新型コロナウイルスは医療現場にさまざまな影響を及ぼしているが、末期がん患者が穏やかな死を迎えるために終末期を過ごすホスピス緩和ケア病棟にも大きな影を落としている。
院内感染防止のための手段として家族との面会制限を行わざるを得ないことで、本来のホスピス緩和ケアを行えない事態が生じている。
緩和ケアは、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者・家族のQOLを、(中略)、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチ」と定義され、「患者・家族を中心としたケア」が重要である。つまり患者だけではなく家族も対象に含めて、そして家族とともに行うケアである。「限りある残された時間をいっしょに過ごしたい」「そばにいて少しでも寂しさや辛さを分かってあげたい」という思い、大切な人とのつながりが新型コロナによって断たれている。
ほとんどの緩和ケア病棟で、家族の写真やメッセージカードを病室内に掲示、ノートでのやり取り、スマートフォンやタブレットを活用したオンライン面会、看取りまでの期間によって面会の基準を調整する等の取り組みがされているが、決して十分な満足が得られるものではない。在宅での療養を実現するための支援を行っていくことも一つの方法、役割である。
当院での実例として、山間部に夫、子どもと暮らす40歳代の患者が、倦怠感と疼痛を訴えて緩和ケア外来初診当日に緩和ケア病棟入院となった。症状がある程度緩和され、病院の感染予防対策のため付き添い・面会がままならないことから在宅での療養を希望された。
幸い患家の近隣の(と言っても結構距離はあるが)病院が最近訪問診療を開始したとの情報を得て、合同カンファレンスを持ち退院。最後は病院での看取りとなったが、直前まで訪問診療、訪問看護を利用して10日あまりを自宅で家族とともに過ごすことができた。
新型コロナの感染は長期化し、根気強い備えが必要になる。感染予防と患者・家族の思いに寄り添うこととの両立という課題にどう向き合っていくか、苦悩はまだまだ続きそうである。
以上