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オンライン診療の検証@

ルール違反・不適切事例が散見

全国保険医新聞2020年10月15日号より)

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の下、初診からのオンライン診療が臨時的に解禁された。菅義偉首相は、恒久化を目指す方針を示しているが、疾患や重症化の見落としリスクなども指摘される。問題点や背景をシリーズで解説する。(4回連載)

 

 厚労省は8月26日付けで、新型コロナウイルス対策としての初診からのオンライン診療や電話再診等の算定要件等を緩和した特例のルール遵守の徹底のほか、電話再診のみで対応した医療機関も含め、2021年3月末までの研修受講の義務化を示した事務連絡を発出した。
 オンライン診療や電話再診等を用いた診療は原則、初診からの利用は禁止されているが、厚労省は新型コロナウイルス感染拡大が進む中、4月10日の事務連絡で臨時的な措置として初診時からの利用を容認。ただ、誤診や疾患見落としのリスクの懸念から▽診療に当たっての情報が全くない初診患者を診療する場合の薬剤の処方は上限を7日▽麻薬、向精神薬や抗悪性腫蕩剤等のハイリスク剤の処方は不可―などの条件が設けられた。
 しかし、8月6日に実施されたオンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会では、このような初診患者に対して7日以上の処方を実施する例や、向精神薬等の薬剤を処方する違反事例などが散見されたと報告された。また、神奈川県の医師が大阪府の患者を診療するといった、過度に遠方の患者への診療などといった不適切事例も報告された。
 厚労省は、違反事例について都道府県に指導の徹底を求めると同時に、不適切事例についても8月26日の事務連絡を通じて、あらためて特例ルールの周知徹底、医療機関のルール遵守の徹底を求めた。

 

解禁の背景に政府の強い要望

 特例解禁直前の検討会でも、「全く面識のない患者への電話やオンラインによる新たな症状の診断やそれに対する処方は極めてリスクが高い行為」と、今回の問題事例と同様の指摘があり、解禁に極めて慎重な意見が少なくなかった。にも関わらず、こうした患者への初診も含め、4月10日発出の事務連絡により特例は正式に解禁となった。
 この背景には、規制改革会議や国家戦略特区諮問会議を始めとした政府会議からの、初診利用解禁も含めたオンライン診療の保険適用範囲の拡大に対する強い要望がある。

以上

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