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コロナ禍と医療現場

患者・住民の信頼を力に

全国保険医新聞2020年10月25日号より)

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の下、患者や地域住民との信頼関係を力に、地域医療継続のため奮闘する会員の姿を紹介する。

 

変わりはじめた日常―東京協会 丸本 百合子

 6月頃までは来院者が激減していたが、9月に入り子宮頚がん検診も始まり、患者さんは戻りつつある。診療所は常に病院との連携が必要だが、5月頃は近隣の基幹病院で相次いで新型コロナの院内感染が発生し、外来の縮小・閉鎖、分娩予約の縮小、手術の延期などの対策がとられたため、紹介先に苦慮した(院内感染が発生していない病院でも、感染が報じられた病院からの転院希望の患者さんの対応に追われ、同じような対策がなされていた)。しかし各病院とも院内感染の克服は迅速で、ほどなくして診療再開に至り、現在では以前と変わらず紹介を引き受けていただけるようになった。
 この間電話による処方箋希望は多かった。オンラインでなくても、同じお薬の継続は電話だけで対応可能だが、事務職員の手間がかなりかかる。ただ緊急避妊薬(当院では院内処方)だけは、避妊に失敗してから72時間以内に服用という制約があり、郵便事故などで薬の到着が遅れたり、処方箋を発行しても最寄りの薬局に在庫がない、などのトラブルに責任が持てないので来院を指示したが、これは今後の課題でもあろう。

ビニールシートを下げた医院の受付。カウンターのボールペン、老眼鏡、チラシなどは撤去した

 緊急事態宣言の頃は暇であった分、患者さんのお話を十分聞いてあげられた。マスクをしていても、長時間の会話は感染の危険も高まるので、診察室のカーテンレールにもビニールシートをかけた。普段は土曜日や仕事帰りなど、混む時間にしか来院できない患者さんが、在宅勤務のため、平日のすいている時間帯に来られて長々と話していかれることもあった。
子どもと夫が一日中家にいるストレスで体調不良を訴える患者さん。今の住宅は在宅で仕事ができる構造にはなっていない。家族がくつろぐための空間で、外で遊べないストレスを抱えて騒ぎまくる子どもの相手をしながらの仕事・会議にはかなり無理がある。テレワークの推進には、住居内に仕事に専念できるスペースの確保が不可欠だ。
また、女性は非正規労働者が多いため、コロナで仕事を失った人もいる。東京都から目の敵にされた「夜の街」で働く患者さんは、経済的困窮と差別に苦しみ、感染の危険におびえている。しかしみなコロナのせいだと思えば、どこにも文句が言えないから、診察ついでに吐き出せて、少しはすっきりしてもらえたかもしれない。

 

地域住民からエール―奈良協会理事 石丸 敏博

  私の勤務する土庫病院(大和高田市)では、4月より本格的に正面玄関にて、発熱や呼吸器症状、倦怠感を訴える患者さんが通常の診療に入らないようにトリアージを開始しました。また、通常の診察場所とは違う、元々健診を行っていた場所にて、トリアージ外来として診察を開始しました。8月13日までに保健所に503件のPCR検査を依頼し、3件の陽性を確認しています。
 次に当院の病棟を改装し、他の入院患者さんと動線が混ざらないように改装した、トリアージ病床を5月11日より5床運用開始しました。新型コロナウイルス陽性患者を受け入れる病床ではなく、土庫病院を受診された患者さんや、入院中に発熱された患者さんなど、あくまで「新型コロナウイルス疑似症患者」を受け入れる目的で運用を開始しました。現在では、土庫病院は「協力医療機関」として認定を受けており、現在も運用を続けております。
 また帰国者接触者外来が8月3日からスタートしました。PCR検査はドライブスルー形式で行う施設が多く、少し敷居を下げる目的で歩いて検査場まで来てもらう「ウォークスルー」として運用しております。
 検査は予約制で、大和高田市内の開業医さんからの予約を対象とし、患者さんから直接の予約は受け付けていません。
 また帰国者接触者外来を実施する施設になったため、PCR検査や抗原検査が保険適用でできるようになりました。独自で検査ができるのはたいへんな強みです。これを最大限活かした医療活動を行っていきます。 
 なお帰国者接触者外来を実施するに当たり、近隣の住民の方にはたいへんなご協力をいただいています。不安なお気持ちを持たれている一方で、「大和高田市が実施しなければならないようなことを土庫病院がやってくれることに期待している」とのお声をいただいています。
 私たちは3月からトリアージを実施するなどいち早くコロナ対策をとってきました。こうした取り組みの積み重ねが地域住民の信頼につながっています。コロナ対策でしんどい日々が続きますが、地域住民、患者さんたちは私たちの取り組みを評価し、エールを送ってくれています。
 土庫病院では今後も大和高田の地域で発熱難民を出すことなく、地域の医療を守り医療活動を続けていけるように努力をしていきたいと考えております。

以上

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