ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

オンライン診療の検証A

続いてきた保険適用拡大圧力

全国保険医新聞2020年10月25日号より)

 

 新型コロナウイルスの感染拡大の下、初診からのオンライン診療が臨時的に解禁された。菅義偉首相は、恒久化を目指す方針を示しているが、疾患や重症化の見落としリスクなども指摘される。問題点や背景をシリーズで解説する。(4回連載)

 

 2018年のオンライン診療料新設当初より規制改革会議や国家戦略特区諮問会議はオンライン診療の適用拡大を繰り返し要求してきた。当初は、糖尿病等の慢性疾患に対して、患者の経済的、時間的な負担軽減を目的に「対面診療と遠隔診療の適切な組み合わせ」による「効果的・効率的な医療の提供を目指す」と主張し、あくまで再診以降での積極的な活用を求めるものであった。
 しかし、新型コロナ感染拡大を契機に初診も含めたオンライン診療の解禁を求めるものに変化した。こうした主張を受けて、4月10日にコロナ禍の臨時的な対応として、初診からのオンライン診療が解禁された。

 

初診・解禁ありき

 9月に就任した菅義偉首相も新型コロナ禍で明確化された主要課題に「デジタル化の推進」を挙げ、オンライン診療のさらなる推進の必要性を強調。菅内閣で厚労相に就任した田村憲久氏も前向きに検討する考えを示した。10月9日に田村憲久厚労相は、河野太郎規制改革担当相、平井卓也デジタル改革担当相の3大臣で「安全性、信頼性をベースにオンライン診療を初診を含め原則解禁する」と合意したことを発表した。
 こうした動きに営利企業も積極的な参入の姿勢を見せている。IT大手のLINEは11月よりオンライン診療サービス「LINEドクター」の開始を発表。同アプリでは病院の予約から診療、決済までが一括で可能となる。コロナ特例下で初診からオンライン診療が可能となり、各種報道でも「患者の利便性」を強調するものが目立つ。

 

医療現場は拙速な解禁に強い懸念

 しかし、オンライン診療でどの程度の診療が可能かや、さまざまな疾患に対するエビデンスの蓄積など中医協等での検証は始まったばかりだ。
 医学的エビデンスが不十分なままオンライン診療の初診解禁ありきで議論が進むことに医療現場から強い懸念が出されている。
 医療現場の懸念を無視し、政府主導で一方的に初診からのオンライン診療の解禁を恒久化する方向性を打ち出すことは非常に問題だ。

以上

ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次