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難病法改正、「軽症」外し継続方針
データ登録も依然課題

全国保険医新聞2020年11月5日号より)

 

 難病法改正に向けて検討が進む。患者データ登録の促進など改善が見られるものの、患者が切望する軽症者への医療費助成の復活などは盛り込まれない見通しだ。全ての難病患者が安心して治療を受けられるよう、医療費助成の拡大が必要だ。

 

 難病患者の医療費助成を定めた難病法は、2015年1月施行5年以内をめどとした見直しを迎えている。
 国の厚生科学審議会では、検討作業班が作成した見直し案を基に具体的な制度設計に向けた検討が進められている。年内に取りまとめ、21年の通常国会に法案提出を目指す構えだ。
 難病法では、医療費助成の対象となる疾病数は旧制度の56から333に大幅に拡大した一方、全ての疾病に重症度基準が導入され、「軽症」と認定された患者は、急性増悪を繰り返す場合を除き助成が受けられなくなった。重症度基準による絞り込みなどで、かえって助成受給者数は法施行前の93万人弱から91万人(2019年3月)に減少している。

 

軽症者フォロー必須

 難病患者にとって医療費負担は深刻だ。年収370万円未満の世帯が、助成受給者の7割弱を占め、住民税非課税も3割に及ぶなど生活環境は厳しい。難病患者は日々変動する心身状態、合併症や後遺障害など安定的な就労もままならない中、長年に渡り医療費負担や関連する出費を強いられている。
 急性増悪時は、体調変化や入院などで助成申請する余裕はなく、3割負担で医療費負担が急増する。難病は一旦重症化すると回復が困難になる上、合併症の発症リスクや発がんリスクが高いなどの特性を持つ場合もあり、軽症時から定期的な受診でフォローすることが重要である。
 軽症者の助成外しは重症化を進める危険性が高い。旧制度と同様に、軽症患者への医療費助成を復活すべきだ。

 

データ引き換えに登録証発行

 軽症者の助成外しは、難病の治療研究にも影響を及ぼしている。旧制度では、病状の軽重に関わらず、助成受給者は診断書の提出(年1回)が義務付けられていた。
 診断書は、疾患の全容(患者数、症状、重症度、病気の進行など)、病態や発症機構の解明など治療研究の基礎にもなってきた。重症度基準の導入で軽症者が助成対象より外された結果、軽症者のデータが集まらなくなり、治療研究の推進上の大きな課題となっている。
 今回、データ登録の促進に向けて、データ提供を行う軽症者に「指定難病登録者証」(仮称)を発行し、関連する福祉サービスを円滑に利用できるようにするなど対応を図る。指定医の負担軽減、データ提出に同意しない患者が支援から取り残されないようにすることなど課題も多い。

以上

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