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さらなる受診抑制懸念 後期高齢者の窓口負担2割化

全国保険医新聞2020年11月25日号

 

 後期高齢者の窓口負担2割化を巡り議論が進んでいる。厚労省は社会保障審議会医療保険部会で2割化による負担金額と家計収支への影響試算を示した。財務省などは2割化を前提に年収区分の議論を先行させているがコロナ禍の受診抑制に追い打ちを掛ける後期高齢者の負担増は中止すべきだ。

 

 厚労省は、11月12日の社保審医療保険部会に2割負担導入に伴う家計への影響について推計を示した。
 厚労省試算では、後期高齢者の窓口2割負担(一般区分)の導入で、加入者一人当たりの負担は、年3万4,000円増額すると試算した。現在は、年平均8万1,000円で2割化で11万5000万円に膨らむ。(高額療養費の償還により単純に2倍にならない)。
 さらに、家計調査を基に後期高齢者の単身世帯、夫婦世帯それぞれの収入区分ごとの収支状況と支払余力を示す試算も示した。
 審議では、医療側委員は、外来受診では、高額療養費制の負担上限があるが、実際には負担上限に達する高齢者は少なく「相当数が2倍になる」との指摘や、「コロナ禍による受診抑制に拍車がかかる」と懸念が出された。一方で保険者側委員は現役世代の負担軽減を理由に「原則2割化」を強く求めた。

 

1割でも負担割合高い

 2割負担導入を巡る議論では「原則2割化」を主張する財界や財務省と「限定的導入」を主張する厚労省や医師会の主張がせめぎ合い、適用される年収範囲を巡る線引きが議論の中心となっている。そもそも、年金が収入の大半を占める後期高齢者は現役世代の収入の半分以下に過ぎない。また、疾病を多く抱える後期高齢者は現役世代に比べ、医療費が多くかかるのは当然である。原則1割負担でも、年収に対する患者一部負担割合は十分に高く、窓口負担の2割導入は、不公平な状態をさらに拡大する。
介護保険で「一定所得」区分での2割負担が導入された。当初は対象範囲を限定的に導入し、その後、対象範囲を拡大してきた。医療への2割負担導入で同様の事態が懸念される。また、コロナ禍の受診手控えによる心身の健康悪化にも追い打ちとなる。負担増は中止すべきだ。

以上

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