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コロナ禍の医療提供体制 全国知事会と医療機関支援で対談
現場支援が最重要 第3波抑止に全力

全国保険医新聞2020年12月5日号

 

 保団連の住江憲勇会長と全国知事会会長の飯泉嘉門氏(徳島県知事)は、11月19日、コロナ禍の地域医療確保をテーマにウェブ対談した。医療機関の大幅減収に関しては、全ての医療機関への財政支援が必要との認識で一致した。
 対談で住江会長は、4〜8月の医療費の落ち込みが激しく、医院経営が逼迫していると報告。また、二次補正予算で一定の医療機関支援が盛り込まれたものの、コロナ患者を受け入れていないとされた医療機関への支援策は不十分であり、全ての医療機関への支援が必要と指摘した。
 飯泉氏も、コロナ患者を受け入れた医療機関は大変な風評被害を受け、受け入れていない医療機関も、受診控えによる患者減の影響が大きかったとの認識を示し、知事会は全ての医療機関への支援を求めていると応じた。

 

「検査体制確立」喫緊の課題

全国知事会 飯泉嘉門会長

 住江 都道府県民の命・健康・暮らし、生業を守るために日々奮闘されていることに敬意を表します。
 飯泉 全国保険医団体連合会の先生方が、世界に誇る国民皆保険制度を維持・発展させてこられたことに心から感謝します。現在は、withコロナ時代、感染拡大を抑えつつ社会経済活動を引き上げていく段階ですが、感染拡大時期とは違う難しさに直面しています。ご質問やご提言をしっかり咀嚼し、国と心を一つにコロナ禍という国難をともに乗り越えていきます。
 住江 1日の感染者が過去最高を更新し、感染第3波が到来しています。感染拡大の防止に向けて喫緊に何が求められていますか。
 飯泉 感染拡大を抑えるために、検査体制を全国に広げていくことが課題です。PCR検査などで1日あたり20万件の検査体制を構築していくことを国に要望してきました。検体採取のリスクを防ぎ、結果がすぐに出る簡易検査キットなどの普及も重要です。11月5日、39名の知事が出席した全国知事会議では、年末年始の休暇の分散取得など、国民向けのメッセージを取りまとめ、その取り組みを呼び掛けました。

 

発熱外来の確保に向けて

住江 憲勇会長

 住江 国は、インフル流行期に発熱患者の診療・検査などの役割を地域の医療機関に求めました。11月10日までに2万4,629医療機関が都道府県から診療・検査医療機関に指定されました。今後の課題や国への要望などをお伺いします。
 飯泉 感染第1波では、保健所にコロナ対応の業務が一手に集中していました。保健所業務のうち、検体採取などを医師会や看護協会が運営する地域外来検査センターに委託し、業務の分散化を図りました。検査で協力体制が構築される中、保健所の業務負担は大きく軽減されました。検体採取を担う医療従事者の感染リスクに対し、しっかりとした補償が必要です。
 さらに、11月に入り、地域の医療機関で発熱患者等の診療や検査を実施する体制を開始しました。顔が見える関係にあるかかりつけ医に相談でき、診察や検査を受けられる方が、患者さんは安心します。季節性インフルエンザと新型コロナの住みわけが難しいこともあり、かかりつけ医を中心とした発熱外来の体制づくりが一番良いと考えています。
 住江 この30年間で保健所は848カ所から469カ所に削減されました。保健所体制が脆弱な中、インフル流行期に地域の医療機関の協力を得て、診療・検査の体制を構築することはやむを得ませんが、やはり保健所や地域外来検査センターの強化も欠かせません。
 民間医療機関が地域での役割を発揮するためにも、発熱外来の補助金の改善、防護具や検査キットの提供、風評被害対策と医療従事者への補償など支援体制の強化を国や各県に求めたいです。
 飯泉 発熱外来の設置などで地域の医療機関が協力しやすい支援体制を構築することが最も重要です。発熱外来の体制確保のための国の補助金は、1日上限20人までで、発熱患者を診察した人数に応じて補助金が削減されます。実態に則して補助金を改善していくことが必要です。
全国知事会では、感染防護具が医療現場で不足する現状を改善するため国に繰り返し要望してきました。また、都道府県で備蓄できる体制整備を国に求めています。
 住江 都市部では、敷地が狭く動線確保など感染防止措置が困難な医療機関もあります。また、医療機関名の公表を原則とする自治体もありますが、公表による患者集中や風評被害を強く懸念しています。
 協力体制を築くためにも医療機関への丁寧な情報発信や不安の解消などが必要です。
 飯泉 大半の都道府県では公表を前提とせず、電話相談を受け診療・検査が可能な医療機関を紹介する方式を取り入れています。私たちも医療機関名の公表で、特定の医療機関へ患者が集中すること、風評被害が生じることを懸念しています。第1波の経験・教訓からも公表を前提とせず、相談を受けて医療機関を紹介していく方が望ましいです。

 

公立病院が役割発揮 再編統合は延期を

 住江 コロナ患者の受け入れなどで全国の公立・公的病院が大きな役割を発揮しました。コロナ感染が収束しない中、公立・公的病院の再編統合の具体化は中止すべきです。
 飯泉 昨年9月に厚労省が地域医療計画の名の下に424の公的・公立病院の再編統合を突然打ち出しました。都道府県は国とともに地域医療計画を作り上げていく立場ですが、地域医療の最後の砦と言われる公立・公的病院を何の議論もなく、再編統合することは、あまりにも乱暴です。国と地方の協議の場の設置を求め、鳥取県の平井知事を中心に国と積極的に協議し、再編統合の実施はしばらく様子を見ることとなりました。
 今年に入り、新型コロナの感染が拡大し、公立・公的病院が専門外来や重症者の受け入れなどコロナ対応で大きな役割を果たしました。再編統合されていれば、この国はコロナとの闘いに敗れていました。コロナ禍を経験し、国も、当分の間は動かさない方が良いと判断しています。

 

全ての医療機関に 財政支援必要

 住江 外出自粛やコロナ感染拡大の影響で全国的に受診抑制が発生し、医療機関の収入も大幅に減少しました。支払基金や国保連合会が公表した統計資料では、4月〜8月の入院・入院外、歯科医療費は、対前年比で1兆756億円減少し、同時期の患者数(件数)も約8138万人減少しました。
患者減と収入減で医院経営が逼迫し、医療スタッフの賃金保障や雇用継続などで重大な支障が生じており地域医療確保は困難な状況です。
 飯泉 緊急事態宣言が全国で発令され、受診抑制は最後まで解除されなかった都道府県で著しい影響が出ています。その後、減少幅が狭まり、レセプト件数も増加傾向にあります。コロナ患者を受け入れた医療機関は大変な風評被害を受けました。コロナ患者を受け入れていない一般医療機関の影響は少ないと思われていましたが、受診控えによる経営への影響は逆に大きかった。国にそれぞれに相応しい支援を求めています。緊急包括支援交付金の拡充について、全国知事会の提言を受け、2次補正予算で2.4兆円に増額、さらに予備費を活用し増額されるとともに、引き続き、医療機関のスタッフに対する危険手当の創設や罹患した場合の休業補償等、対象期間の延長や支給対象の拡大など、今後の感染拡大に応じ柔軟に対応できるよう要請を行っています。さらに、地方創生臨時交付金が合計3兆円に増額され、地方自治体が地域の実情に応じて医療機関などへ支援することが可能となりました。
 住江 2次補正予算で感染防止対策への支援金、医療従事者への慰労金、空床確保など一定の医療機関支援が盛り込まれましたが、コロナ対応の医療機関への支援が中心で、一般の医療機関支援策は不十分です。地域医療を確保するには、コロナ患者受け入れの有無に関わらず、すべての医療機関への支援が必要です。
 飯泉 医療機関の経営支援するため、全国知事会は、公立・公的病院をはじめとするすべての医療機関に対する財政支援など、医療機関の経営悪化へ歯止めをかけることを求めています。
 住江 地域医療確保に向けご尽力をお願いします。
 飯泉 懇談を通じて、コロナ禍での医療現場の苦境を実感しました。コロナ感染による死者数が世界的に見て低く推移しているのは、病院経営や危険を顧みず医療従事者が第一線で奮闘されてきたおかげです。要望を咀嚼して国とともに、財政支援や制度構築などしっかり取り組んでいきます。

以上

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