159自治体 全医療機関支援
来年度以降の継続が課題
(全国保険医新聞2021年3月15日号)
国が減収補填を行わない中、多くの自治体が「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用しながら、医療機関の財政支援を行っている。このうち、歯科を含むすべての医療機関・医療従事者への財政支援を行っているところは全地方自治体の1割ほどある。
都道府県では、山形県は、歯科を含む診療所約1,730カ所に30万円を給付(2020年7月)、佐賀県は、独自に医療従事者等に6万円の支援金を支給(2021年3月見込み)している。
すべての医療機関に財政支援をする市町村は、保団連の調査だけでも159にのぼる。補助の仕方は、@医療機関に一律ないしは規模に応じた額を給付A国の2次補正に計上され、都道府県が実施主体となっている「感染拡大防止等支援補助金」「医療従事者慰労金」への「上乗せ」支給など。@の事例として、「受診者の減少で経営に打撃を受ける医療機関に30万円」(宮城県山元町)などがある。Aの事例としては、「町内の医療機関が新型コロナ感染症拡大防止の体制づくりを行った場合の費用を一部補助」(長野県高森町)、「医療従事者が強い使命感を持って従事されていることに応援金の給付」(東京都東久留米市)などがあげられる。
しかし、すでに事業を終えたものや、2020年度末で終了するところがほとんどである。
支払基金と国保中央会の統計をみると、「第3波」が始まった11月以降、全国のレセプト請求件数と確定点数は対前年同月比を下回っている。地域の医療機関を守るために、国に減収補填策を求めると共に、自治体が、財政支援策を講じることも必要である。
調査資料(3月31日現在)[PDF:1,687KB]
「1事業所につき100万円」も
地方自治体による医療機関支援の事例
全国の市町村で行われたすべての医療機関・医療従事者への財政支援や感染防止対策への補助のうち、特徴的な事例を紹介する。
医療機関への一律の財政支援
宮城県・栗原市(人口約6万6,000人) 医療施設等特別支援金(実施済み)
▼病院、医科・歯科診療所に対し1事業所につき100万円
鳥取県・岩美町(人口約1万1,000人) 地域医療確保対策事業(実施済み)
▼感染拡大などに伴う受診控えの影響を受けている町内医療機関に対し、医療提供の継続を目的として1医療機関につき100万円の支援金を給付
※町が町内の医療機関の実態を調査して実施
感染防止対策への補助
広島県・海田町(人口3万人) 海田町感染拡大防止医療機関応援事業(2020年度で終了)
▼対象機関は県が実施する「医療機関・薬局等における感染拡大防止等支援事業」の申請をしている医療機関で、県の補助上限額を超える町内医療機関(医科・歯科)
▼補助上限額:100万円
▼補助率:4/5
▼対象経費:2020年度感染拡大防止対策に要する費用など
医療従事者への慰労金・応援金
高知県・室戸(むろと)市(人口1万2,000人)
室戸市新型コロナウイルス感染症対応医療従事者等慰労交付金(実施済み)
▼医療従事者等1人当たり5万円
※国の医療従事者慰労金とは別に市町村が独自に支給
※1人当たり5万円の支給は、他に群馬県片品村(人口3,900人)、大阪府四条縄市(人口5万5,000人)、鹿児島県南種子町(人口5,400人)、沖縄県宮古島市(人口5万2,000人)など
「3波」を受けての追加支援
大阪府・摂津市(人口8万6,000人)
▼対象となる従業者:医療非常事態宣言期間中、市内の病院、診療所、薬局で患者等に直接かかわる機会が生じていた業務に従事した者
▼対象従業者1人につき1万円
山口県・防府(ほうふ)市(人口約11万4,000人)
▼医療機関、介護施設等の従事者に激励金を支給
▼2020年度に続き、21年度当初予算に1人あたり1万円の激励金の支給を計上
以上