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あらためて考える 歯科の院内感染対策
(上)ポイントは標準予防策

全国保険医新聞2021年4月15日号

 

 昨年12月、歯科医療機関でB型肝炎に感染していることを伝えた患者の約2割が差別的な扱いを受けたと感じた経験があるとの報道がされた。東京歯科協会理事の浜崎啓吾氏(写真)は、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団のシンポジウムで歯科の感染対策について講演するなど、B型肝炎患者と歯科医療機関の信頼醸成に努めてきた。新型コロナやB型肝炎を含む感染症予防や、患者にストレスなく受診してもらうには何が必要か、寄稿してもらった。(2回連載)

 

浜崎 啓吾
はまざき・けいご
 浜崎歯科クリニック(東京都練馬区)副院長 、東京歯科保険医協会理事・院内感染防止対策委員長
[略歴] 2003年神奈川歯科大学卒業、国立国際医療研究センター病院歯科口腔外科勤務を経て、現在浜崎歯科クリニック副院長 。2017年より全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団主催の「歯科の感染対策を考えるシンポジウム」に参加し基調講演。

 新型コロナウイルス感染症が拡大蔓延して、二度目の春を迎えた。この未曾有の事態に遭遇し、我々医療従事者のみならず全人類をあげて感染防止対策に取り組んでいるのはご承知の通りである。
 これまで感染防止対策、とりわけ歯科における院内感染防止対策はたびたびバッシング報道に晒されてきた。しかしながらこのコロナ禍において歯科医療機関でのクラスター発生の報道は現在までほとんど耳にしない。これは各歯科医療機関がこれまでも院内感染防止対策をしっかりと実践しているからではないだろうか。そんな中、昨年末には、毎日新聞でB型肝炎患者への歯科感染対策について取り上げられた。
 東京歯科協会では2017年より全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団主催の「歯科の感染対策を考えるシンポジウム」に参加し、感染症を持つ患者さんの切実な声に触れてきた。とりわけ患者さんの中には自らの感染症を正確に申告することで、受診拒否や隔離など、他の患者さんと「区別」され、傷ついた経験を持つ方が多くいる。
 今このコロナ禍だからこそ、わたしたちは全ての人々が納得できる歯科院内感染防止対策について見直し、そしてそれを実践する時に来ているのではないだろうか。

 

全ての患者に同様の対策を

 院内感染防止対策において新型コロナウイルス感染症も、B型肝炎も、他の感染症でも対策は変わらない。ポイントは「標準予防策:スタンダードプリコーションの遵守」である。
 新型コロナウイルス感染症は多くの無症状感染者がいることがわかっているが、これは他の感染症でも同じである。つまり患者自身も自分が感染していることに気づいていない、また自身の感染症を正確に申告しているとも限らない。そのため全ての患者は何かしらの感染症の恐れがあるものとして、同様の感染防止対策を実施する必要があり、これこそが標準予防策(スタンダードプリコーション)の概念である。感染症を申告することで受診拒否や時間の変更、また隔離など、他の患者さんと「区別」されることは感染症患者に耐えがたい苦痛を与えるとともに、医療機関で自身の感染症の申告の妨げになっている事実があることを、私達は知らなければいけない。

(次号へ続く)

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