海外メディアから取材殺到「#看護師の五輪派遣は困ります」
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愛知医労連 矢野彩子書記次長 |
東京五輪パラリンピック組織委員会が五輪開催のため看護協会に看護師500人の派遣要請したことを受け、看護現場から批判が相次いでいる。ツイッター上で看護師の五輪派遣に反対し、短期間で賛同を広げた愛知医労連の矢野彩子書記次長(写真)に実態を聞いた。
新型コロナ感染の第4波で、必要な入院治療が受けられず亡くなる人が増加する「医療崩壊」が続いています。その中での「五輪に看護師500人派遣要請」報道に衝撃を受け、医療現場の深刻な状況を伝えなければと、「#看護師の五輪派遣は困ります」ツイッターデモを始めました。
4月28日の開始から20日間で51万ツイートを突破し、さらに広がり続けています。米国、英国などの海外メディア含め50社近くから取材が殺到しています。
「看護の日」(5月12日)の記者会見のもよう |
「看護の日」に愛知県庁前でアピール |
ツイッター上では、「もう頑張れないと思いながら今死ぬかもしれない患者さん達を看ています。置いて五輪には行けません」「心身共に疲労困憊で闘っている看護師にまだそんな無茶を言いますか?」「私たちは国の奴隷ではない」と看護師の悲痛な叫びが溢れました。
「派遣するならひっ迫した病院やワクチン接種会場へ」「無報酬なんて看護師をバカにしている」など批判の声も相次ぎました。
「休んでいる看護師がいるから可能」との首相発言は、さらに看護師の怒りを買い、「育児や介護、体調不良など事情がある」「なぜ潜在看護師が多いのか、根本的な原因を解決しないと復帰できない」などの怒りのツイートを呼びました。
看護現場は元々の人手不足に加え新型コロナの影響での退職者の増加や新人の就職辞退もあり、さらに深刻化しています。16時間以上の2交替夜勤は月平均4回以内にすべきところ、月6〜7回に増え、本来本人からの申請で深夜業を免除すべき妊婦も、夜勤をしないと現場が回らないような病院も出ています。
私たちが3月に取り組んだ看護師コロナ緊急アンケート(1,478人が回答)では、7割以上の看護師が退職したいと回答、48%が人員不足と答えています。
看護師が健康で長く働き続けられるためには、看護師の配置基準を引上げ、人を増やして夜勤回数を減らし、休みを増やす等、看護師の心身の負担を減らす必要があります。国民のいのちを守るためには医療従事者が働き続けられる環境が必要です。
今回のツイッターデモは、「命より五輪が優先か?」の問題提起を世論に投げかけたと思います。「これまでモヤモヤしていたが、声をあげられる場をくれてありがとう」と感謝してくれる看護師もいました。SNSで発信する看護師が増えたのはうれしい影響です。「医療崩壊」の実態にもかかわらず、国民の命より五輪を優先させている政府には強い憤りを感じます。
愛知県医労連は5月12日看護の日に「五輪開催ありきではなく、国民のいのちを守ることを最優先に、医療崩壊を食い止めるため、新型コロナ感染対策に全力をあげることを強く求める」声明を発出しました。
もはや、問題は「五輪を開催するか否か」でなく、医療崩壊をどうくい止めるかです。医療に注目の集まる今、看護師の勤務環境を改善しなくては日本の医療に未来はありません。今回のこのうねりを、看護師の大幅増員・夜勤改善・待遇改善へつなげていきたいと思います。
以上