(全国保険医新聞2021年6月15日号より)
コロナ陽性患者への往診などを経験した医療法人敬愛会まつざき内科クリニック(西京)の松崎恒一医師(写真)に話を聞いた。(京都保険医新聞より転載)
―患者さんの背景について教えてください 陽性となったIさんは89歳の男性の方で独居。お子さんは関東にお住まい。もともと他の病院の患者さんで当院にも通院していた。腎臓の状態がかなり悪く、最近のデータではeGFR11、クレアチニン4r/dL、カリウム7mEq/Lという数値だった。本来であれば透析の適応だが、肺がんが見つかったこと、本人が透析を拒否したこと、透析のための通院も独居のため無理だということで透析は行わず、病院からの紹介で当院が体調の管理を行っている状況だった。 ―防護はどうしましたか。 フルPPEで訪問した。看護師は玄関で待ってもらい、私だけ室内に入らせてもらった。近所の方たちや道行く人たちの目もあるので、玄関の内側に入らせてもらい土間で着替えをして診察・検査を行った。 ―その後の経過は。 21日に陽性が判明した後、「ひなた」に連絡。もちろん、保健所にもすぐさま連絡を入れており、すぐ入院になると思っていたが、Iさんは自宅待機に。病床の逼迫がピークに達していて、確保することができなかったのだろう。以後は保健所の管轄になると考えていたが、容態が気になり、22日と25日に訪問診療を行った。万が一の時は救急搬送もあり得ると思いながらの訪問だった。 ―患者さんの容態は。 22日の訪問時は18日とほぼ変わらず、25日に採血を行い、腎機能の数値を翌26日に「ひなた」に報告。コロナ自体は落ち着きつつあるが、脱水症状による腎機能の増悪が顕著で、このまま訪問診療、訪問看護を続けた場合に自宅で亡くなる可能性が高いと説明。「ひなた」から保健所へ連絡を入れるよう依頼したが、保健所につながらなかった。保健所もかなり混乱していたのだろう。保健所から病院への搬送は難しいと判断。我々から病院への入院手配をと考えていたが、腎機能が少し持ち直したこともあって、幸いIさんは回復。2月26日にIさん宅を訪問したら、ものすごく元気になっておられた。 ―京都協会は1月29日にこの事例を聞き、京都府とやりとりをして公費で請求することを確認し、2月5日に会員に広報しました。京都府が訪問診療チームを立ち上げると発表したのもこの日です。26日には厚労省が自宅・宿泊療養者への緊急往診関連の報酬算定可能と通知しました。先生をはじめ、往診や訪問診療が必要だと訴えた医師の功績が大きいと思います。その他、国や自治体への要望はありますか。 Iさんの場合、陽性が判明したことで介護の提供も止まってしまった。この穴を埋めたのは「ひなた」で、入浴介助まで行ったと聞いている。ヘルパーも他の利用者を抱えており、コロナ陽性患者への対応は困難だ。Iさんは幸いにも回復に向かったが、やはり入院は必要だったと思う。 以上 |
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