75歳医療費2割化法が成立
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日本高齢期運動連絡会調査より |
参院厚労委員会で負担増が 受診抑制につながると訴える吉岡氏 |
5月31日の参院厚労委員会でも、負担増となる高齢者の生活への影響について懸念の声が出された。
法案では、75歳以上の「単身で年収200万円以上」または「夫妻で年収320万円以上」が負担増の対象となり、約370万人に影響が及ぶ。
厚労委員会で、参考人として意見陳述した日本高齢期運動連絡会代表委員の吉岡尚志氏は、年収205万円で負担増の対象となる76歳単身女性の生活の実例を挙げた。
女性が支払う年間の医療保険料(後期高齢者医療制度)は3万3,000円、介護保険料が7万9,000円だ。ここに現在、1割負担の窓口支払い3万9,000円が加わり、医療・介護への支出で、年間約15万1,000円を負担している。窓口負担が2割に引き上げられれば、これが約19万円に膨らみ、年収の10%近くを占めることになる。
介護保険サービスを利用していれば1〜3割の利用料、持ち家がなければ家賃、日常の食費被服費なども、もちろん確保しなければならない。
吉岡氏は「高齢になるほど医療、介護の出費が大きくなる。負担増によって受診を抑制しかねない」と指摘した。
同連絡会が3月に公表した調査によれば、2割負担になったら、「通院回数を減らす」(13%)、「受診する科を減らす」(8%)、「薬の飲み方を調整する」(5%)(いずれも単身世帯)と、約3割がこれまでどおり医療にかかれないと答えている。
後期高齢者の8割以上が慢性疾患を持ち、6割以上が複数の治療を受けている。およそ半数は毎月の受診が必要だ。継続的に医療を受けられなくなれば、重症化しかねない。
同調査に、負担増でも今まで通り受診すると答えた人でも「病状から受診を控えるわけにはいかない。食費などを減らすしかない」と答えるなど、生活への影響は大きい。
法案成立に先立つ3日、保団連は国会内で集会を開き、負担増の中止・撤回を求める署名を提出した。署名は累計105万筆を超えている。
集まった医師・歯科医師らからは、「受診抑制が起これば疾病の早期発見ができなくなる」「コロナ禍で既に受診できていない患者もいる」などの発言があり、総選挙も視野に負担増の中止を求めようと呼び掛けられた(集会詳報は7面)。
以上