社会保障財源を考えるA実は低い社会保障費
(全国保険医新聞2021年6月15日号)
消費税増税に頼らない保団連の財源提案を連載で解説する。第2回は、財源問題を考えるにあたり、社会保障費と税収の現状について考える。(随時掲載)
社会保障費の増大がよく問題視されるが、日本は、高齢化の進展度合いに比べ、社会保障にかける費用(国・地方)は低いのが実態である。
「厚生労働白書」(2020年度版)は、高齢化率(65歳以上人口割合)との関係で主要な欧米諸国における社会保障の給付規模(対GDP比)について記載している。白書は、「いずれの国も高齢化の進行とともに給付規模は拡大する傾向にある」とした上で、「我が国は最も高齢化が進んでいるが、社会支出の対GDP比は、我が国よりも高齢化率が低いフランス、スウェーデン、ドイツの方が我が国を上回っている」としている。
具体的には、白書によれば、日本(17年度)は、高齢化率が27.7%のところ、社会保障の給付規模は22.3%である。フランス、スウェーデン、ドイツは高齢化率が各々18.9%、19.6%、21.1%と日本より7〜9ポイント低いが、社会保障の給付規模(15年度)は各々31.3%、25.8%、26.8%と日本より3.5〜9.0ポイント高い。これらの国に比べると、日本は給付費が19兆〜50兆円足りない形だ。また、高齢化率が14.6%と日本の半分にすぎない英国が、社会保障の給付規模では22.4%と同じ程度を支出している。
日本は、世界で最も高齢化が進むにもかかわらず、極端に社会保障支出が低い。社会保障が財政逼迫の原因とするのは誤りである。
低い税収規模
他方、先進諸国において、租税収入の規模(対GDP比。2018年)を見ると、フランス30.1%、イタリア28.8%、英国26.6%、ドイツ24.0%に対し、日本は18.6%と極端に低い(表)。「減税」を売りにする米国の18.4%と変わらない水準だ。仮にドイツ並みの水準であった場合、現状より30兆円税収が多かったことになる。
社会保障財源をめぐる問題は、日本の社会保障費が大きいことではなく、経済規模に見合った水準で税収を調達していないことにある。
以上