入試差別はなくなったのか 医療界の不平等深刻
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齊藤みち子女性部長 |
日本の女性医師割合の低さは世界でも突出しており、OECD加盟国の中では最下位です(図1)。女性医師が7割を超えている国もあり、決して女性が医師に向かないということはありません。2018年に発覚した東京医大などの女性受験生に対する入試差別は、日本の医療界のジェンダー不平等の深刻さを浮き彫りにしました。
文科省は問題の発覚後、2013年から18年までの全医学部・医学科の男女別合格率を公表しました。保団連女性部は19年以降についても公表すべきと求めたものの、文科省は拒否してきました。
しかし、寺田学衆院議員(立憲)や吉良よし子参院議員(共産)が予算委員会などで質問に取り上げ、ようやく昨年12月に、19年、20年分の公表に踏み切りました。今後も毎年公表するとしています。私たちの要請後に実現した国会議員の質問の影響は大きかったと思います。
公表されたデータをみると、19年、20年も約7割の大学で、女性の合格率が男性より低い傾向が続いており、18年の入試差別発覚後も変わっていないことがわかります。他の学部の男女別合格率は公表されていませんが、入学者数を志願者数で割った入学率を比較すると、医学部だけは、女性が男性より低くなっています(図2)。女性が合格しにくいという医学部の特殊な傾向がみてとれます。
また、医師国家試験合格者の女性比率は、2003年ごろに3割に達した後にそれまでの右肩上がりの伸びがぴたりと止まり、そのまま15年以上横ばいです。一方、医師国家試験の合格率は、ここ25年以上、常に女性が男性よりも高くなっています。
これらのデータから考えると、女性の医学部合格率の低さは不自然であり、以前から入試差別が行われ、今も続いているのではないかと考えています。実際に私も、大学関係者から「女子を入れると大変だ」という発言を何回も聞きました。
東京医大は小論文で男性に加点するという方法で差別をしていました。小論文や面接試験などが「ブラックボックス」となり、女性の点数を低くしている可能性があります。各大学の筆記試験や面接試験など入試の科目ごとの男女別の平均点数などの公表も求めていきたいと思います。
入試差別が生み出される背景には、言うまでもなく医師不足による医師の長時間労働の問題があります。男女ともに余裕を持って働けるよう、政府の医師数抑制政策の転換、医療機関で医師の増員ができるよう、診療報酬の引き上げを含む財政的な整備が不可欠です。
さらに、女性に家事・育児の負担が偏っている現状も問題です。この現状が変わらなければ、女性が結婚や出産後に離職すること等を懸念して、入試での差別が繰り返されてしまうでしょう。 性別役割分業意識は男女ともに抱えていると思います。私にも経験があります。結婚すると男性は、妻が家事・育児をするのは当たり前(自分は「手伝い」)、女性は、自分が家事・育児を中心に担わなければならないと、当然のように考えてしまうことが多いのではないでしょうか。私たちのすべてがその意識に向き合っていく必要があります。
保団連女性部では、医療界のジェンダー平等の実現には医師の抜本的増員による医師の働き方改善と社会の意識改革の両方が必要と考え、取り組みを進めていきます。
以上