「2割化」実施阻止へ 国会論戦を振り返る
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衆院予算委員会の参考人質疑で75歳以上窓口負担2割化反対を訴える保団連の住江会長(2月16日) |
「2割負担導入」を含む法案の名称は「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部改正案」。菅政権が進める「全世代型社会保障」改革として進める一連の制度改定の目玉の一つが「2割負担導入」である。
法案は4月8日に衆院本会議で審議入りし、6月3日の参院本会議で可決・成立した。衆参いずれでも、与党の自民、公明両党のほか、野党では維新と国民民主党が賛成した。実際に「2割負担」が実施されるのは2022年10月から23年3月1日までの間の政令で定める日とされており、現時点では未定である。
後期高齢者の医療費窓口負担割合は、これまでは現役並み所得の人(3割負担)を除いて1割負担だった。新たに、2割負担となるグループを作るというのが今回の改定だ。
新たに2割負担となるのは、現在1割負担の高齢者のうち、「課税所得28万円以上かつ年収200万円以上(単身世帯の場合。複数世帯は後期高齢者の年収合計が320万円以上)」の人。政府の試算では、被保険者全体の約2割、およそ370万人が対象になる。
「年収200万円」の基準については、国会の議論の中でも合理的な根拠は示されていない。また国会審議を通じて野党の議員からたびたび、窓口負担増による受診行動の変容、すなわち受診抑制による、患者の健康への影響について懸念が示された。野党の追及に対して田村憲久厚生労働大臣は、「基本的に必要な医療はしっかり受けていただく」などとするのみで、明確な答弁はなかった。
「2割負担」による医療費抑制という財政効果を狙う一方で、受診抑制による患者の健康への影響には無関心とも言える政府の姿勢が露わになった。菅首相は「個人の健康に与える影響は予め分析することは困難」「今回の見直しによる受診行動の変化に伴う具体的な影響額は聞いていない」などと答弁している。
負担増となる高齢者に対する「配慮」として政府が用意した制度は、施行後3年間は外来受診について1カ月間の負担増分を最大3,000円に抑えるとするもの。これによっても、外来受診について年36万円まで負担増を強いられる。政府も、配慮措置があっても一人当たり年2万6,000円の負担増と計算している。
以上