オンライン初診恒久化 コロナ禍に便乗 なし崩しの解禁
学会、医療界も慎重意見
(全国保険医新聞2021年7月25日号より)
政府は、新型コロナウイルス感染拡大により特例的・時限的に認めている初診からのオンライン診療を恒久化する方針を示した。オンライン診療のさらなる活用にむけた基本方針も別途定める構えだ。特例ルール違反も散見される中、恒久化により事態のさらなる悪化が危惧される。
ルール違反、不適切事例散見
現在の特例下でも、都道府県による再三の指導にもかかわらず、処方できる薬剤・日数などのルールが守られていないケースや、重篤疾患の可能性のある症状に対して受診勧奨が少ない、遠方地の患者を診療しているなど不適切な事例が散見される。
こうした中、日本医学会連合は6月、オンラインでの初診に「適さない症状」や医師の判断を踏まえ投与に「十分な検討が必要な薬剤」を示した提言を公表した。厚労省は提言も参考に秋口にオンライン診療指針の改定を目指すが、検討会では「明らかに投与がまずい薬が一定程度ある」「在宅酸素やインスリン自己注射など指導の中で見極めないと危険な医療行為は線引きすべき」など、処方薬剤や期間について提言よりも明確な決まりを求める声が上がっている。安全性に関わって、不適切例を見つけるパトロールの仕組みや不適切例発生を事前に防ぐペナルティ導入を求める声も出ている。
通院時間確保を
政府の規制改革実施計画では、初診からのオンライン診療は原則かかりつけ医によるとしつつも、以外の医師でも事前に患者とオンライン上でやり取りして医療情報等が把握されていれば、初診からオンライン診療を認めるよう求めている。見知らぬ患者でも事前にやり取りしていればオンライン診療可能となれば、原則よりも例外の範囲が広い形となりかねない。
検討会では、やり取り自体がなし崩し的にオンライン診療に移りかねないとの危惧も出ている。実施計画では、オンライン初診により、健康な勤労世代やかかりつけ医がいない患者の受診機会を確保するかのように述べているが、日医は「企業には通院時間を確保することも考えてほしい」「まずはかかりつけ医の普及を進めることも必要」と対面診療を確保するよう求めている。保団連は、コロナ禍に便乗したオンライン初診の恒久化に反対し、あくまで対面診療の補完に留めるべきと求めている。
以上