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国際エイズ学会・HIV科学会議―ベルリン
コロナ禍懸念の声相次ぐ エイズとの苦闘から学んで

全国保険医新聞2021年9月5日号より)

 

 国際エイズ学会・HIV科学会議(IAS2021)が7月、ドイツ・ベルリンで開催された。日本人42人を含む世界各国の1万人が現地とウェブで参加。感染予防策、食や口腔衛生など500を超す演題が発表された。米国立アレルギー感染症研究所 (NIAID)のアンソニー・ファウチ所長ら感染症の世界的権威が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とHIV/AIDS等の最新知見等を発表。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は感染症に打ち勝つために自国第一主義でなく国際間の連携を国際社会に訴えた。(杉山正隆 写真も)

 

米国NIAIDのアンソニー・ファウチ所長が
世界的な対応を呼び掛けた。
)HIV/AIDSでの経験から学ぼう、と国際的な連携を
呼び掛けたドイツのアンゲラ・メルケル首相

 2020年末現在、世界のHIV陽性者は3,760万人。新規感染者は年間150万人、エイズ死者は69万人に上ると推定されている。40年前に最初の症例以来、3,500万の人命を失った。日本では昨年の新規感染者・エイズ患者は1,000人余。
 開会式でメルケル首相は「感染症は世界的な課題。互いから学び国際的な連携があってこそ問題を解決できる。コロナによりHIVとの闘いで勝ち取ってきた成果が失われつつある。英知を結集しよう」と呼び掛けた。
 NIAIDのファウチ所長は「敵はウイルスで、意見の相違や人々ではない。相乗的な協力を全世界に求めたい」と話した。「数十年にわたるHIVへの投資と研究が新型コロナワクチン開発に大きな役割を果たしたのは間違いない」とも。

国連エイズ計画 「不平等が拡大し深刻な状況」

 国連エイズ計画(UNAIDS)は年次報告書2021「不平等に立ち向かう」(Confronting inequalities)を発表した。「HIV陽性者はCOVID-19に対し『脆弱な立場』に置かれているのに、新型コロナ禍による混乱で不平等が拡大している」と指摘する。
 UNAIDSのウィニー・ビヤニマ事務局長は「数百万もの人が新型コロナの対応を理由に救命治療を拒否され亡くなっていった。アクセスの不平等は深刻だ。この40年、苦闘したHIVの教訓から学んでいない」。「ニューノーマルなどと呼び座視することはできない。恐ろしい不平等に立ち向かい、『基本的人権の尊重』の原点に立ち戻るべきだ」と強調する。
 「新規HIV感染が10年前より23%減少するなど、予防では大きな成果を上げたが、努力が台無しになりかねない。コロナ禍がもたらす影響は極端に大きく、LGBTIQなど『鍵となる弱い立場にある人々』(Key Populations)、若い女性など取り残された人たちが大きな社会的障壁の影響を受けている」と憂慮を表明した。

国内の医療提供体制確保も必要

 新型コロナにより多くの不平等が劇的に悪化した。会議は、「ワクチンを貧しい国々の人たちにも確保する」という道徳的義務を日本などの先進国に課した。
 新型コロナワクチンを世界各国に公平かつ迅速に分配する世界的枠組み「COVAXファシリティ」。日本も参加し、今年末までに20億回分を全ての国への供給を目指す。
 他方、国内での対応は惨たんたる状況だ。公的公立病院の統廃合、保健所の半減、医師数の抑制などを強引に進め、医療体制を脆弱化させてきたのは日本政府に他ならない。今こそ、国内での感染症へのさらなる取り組み、医療体制を強固にする「予算の重点配分」が求められている。

以上

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