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コロナ禍と医療現場

検査・往診・投薬に全力

岐阜協会 竹田 智雄氏、愛知協会 早川 純午氏

全国保険医新聞2021年10月25日号より)
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 新型コロナウイルス感染流行の第5波では、多くの開業医が急増する自宅療養患者の治療に奔走した。岐阜と愛知の会員の経験を紹介する。

 

一命取り留めて―岐阜協会 竹田智雄

 岐阜県では自宅療養ゼロを堅持してきたが、感染激増のため、病床、宿泊療養施設が逼迫し、8月21日から自宅療養が始まり、8月28日には932人まで達した。自宅療養中の診察を行った3例を報告する。
 1例目―工場勤務の30歳男性が39度の発熱を認め来院した。PCR検査の結果、陽性が判明し保健所へ報告。軽症であり自宅療養となった。
 数日後、岐阜県庁自宅療養サポートチームから電話で患者の診察依頼を受け対応。診察にて「熱のため全身倦怠感があるので薬がほしい」と患者の訴えを受け処方し、薬局に薬を届けてもらい、回復した。
 2例目―居酒屋経営の33歳男性が39.5度の発熱を認め来院。PCR検査の結果陽性で保健所に報告。体重が100キロで、ヘビースモーカーのため重症化リスクが高い。しかし、病床、療養施設とも逼迫のため、自宅療養となった。
 抗体療法が3日後に予定されたが、その日の朝SpO2が97%から89%へ急激に増悪したため、抗体療法を行う予定の病院へ救急搬送し、肺炎で緊急入院となった。その後の加療で一命を取り留めた。
 3例目―31歳女性で統合失調症を患う患者から40度の発熱のため往診依頼を受けた。PCR検査で陽性を確認し保健所に報告したが、軽症のため自宅療養となった。
 3日目の朝、突然SpO2が88%となり往診の依頼を受け診察。SpO2が85%でチアノーゼを認め、直ちに救急車を要請し、病院へ搬送した。病院で人工呼吸器を装着したが、ステロイドの投与などで回復した。
 自宅療養者の急変、家庭内感染を防ぐため、病床や宿泊療養施設の確保が求められる。

 

自助で自宅療養は限界―愛知協会 早川 純午

 当院は、名古屋南部工業地帯に近接し、市内でも高齢化率・生活保護受給者の比率も高い地域で在宅支援診療を行っている。自宅療養中の2件を所管の保健センターからの依頼を受け往診した。
 1例目―第4波の5月中旬。当院がかかりつけ医である90歳代の女性患者で、孫より感染し、本人を含む四人が家族内感染した。認知症が進行、生活困難となり発症3日前にワクチン接種を受けた。
 高熱・SpO2低下で発症。すぐに入院できず2日目に往診を依頼された。自宅は2LKの市営住宅で以前から整理整頓できず、窓を開けることも困難な状態だった。
 保健センターより今後の訪問診療・看取りも要請された。電話再診で状態は悪化、入院をすすめ、看取りを条件に3日目に入院できたが、16日目に亡くなられた。
 2例目―第5波の8月中旬。50代男性の事例。同僚から感染し、その後高熱で当院発熱外来を受診し、PCR陽性にて保健センターと相談し、自宅待機となった。家族全員陽性となった。
 翌日、呼吸困難、SpO2も90%前後、体動時に呼吸困難が強く、臥床状態を電話で確認の上、ステロイドを処方した。
 5病日後、さらに酸素状態が悪化し、往診を依頼され、酸素濃縮器とともに自宅のマンションを訪問した。自宅は2LDKで、窓は解放しエアコンはつけてあるが暑い。また、室内の整理整頓はできておらずゴミの入った袋が散在していた。酸素濃縮器を設定、使用方法を説明し、ステロイドの内服継続を指示した。その後、電話再診で回復したことを確認した。
 電話では生活環境がわからず、やはり実際に家の中を見ないとわからない。自助で自宅療養ができる環境は当院の周辺ではない。適切な療養環境・隔離ができなければ家族内クラスターは当然のように起こる。
 入院できない状況では患者の年齢、ADL、認知面などによるトリアージが実際に求められるが、倫理的にも精神的にもつらい。

以上

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