医学部合格率 「逆転」に注目
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(上)男女別合格率の逆転を報じる1月27日付「日経」(下)ネットメディアBuzzFeedで公開された斉藤女性部長のインタビュー |
全医学部の合格率公表、20年末に実現
女性受験生差別が発覚して以来、女性部が繰り返し求めてきた全医学部の男女別合格率公表が、20年12月に実現した。
文科省は、当初、女性部の要請などで「不正が行われていた大学以外は公表しない」との態度を示していた。しかし、国会でも全医学部のデータ公表を求める質問などが相次いだことで、同省は20年12月に、ようやく全医学部の男女別合格率を毎年調査・公表することを決めた。
21年度入試で男女の合格率逆転
その直後に行われた21年度入試では、合格率が公表されている13年度以降で初めて、女性の合格率(合格者数/受験者数)が男性を上回った(表1)。さらに女性部の調査により、男性の合格率が女性よりも高い大学の割合が、7割程度から4割程度に激減したことも判明した(表2)。これは、合格率の逆転が、少数の大学ではなく全体的な入試動向の変化によるものであることを示している。
以前から、女性医師を中心とする医療関係者の間では、医学部入試での女性差別の存在が指摘されていた。それを裏付けるように、20年度までは男性の合格率が高い医学部が全体の約7割を占めており、入学率を他学部と比較すると、医学部だけは女性が男性より低くなっているなど、女性が合格しにくい傾向にあった。文科省のデータ公表により、入試における差別の是正が進みつつある。
メディアが相次ぎ報道
女性部は調査結果を基に、医学部入試開始直前の1月17日、女性差別のない公正な入試の実施を全医学部に求める声明を発表。全医学部長病院長会議はこれを受けて、全国の医学部長宛てに声明を送り、差別のない入試を実施するよう求めた。
さらに、1月26日に「日経」電子版に「医学部合格率 男女が逆転」の記事が公開され、合格率逆転の事実が初めて一般マスコミで報道された(27日付紙面にも掲載)。記事は大きな注目を集め、公開日には日経新聞サイトの記事アクセスランキング2〜3位に終日ランクイン。SNSでも次々と拡散され、「不当に落とされてきた女性受験生のことを考えると胸が苦しい」「声をあげた人たちの力で一歩進んだ結果」などの声が飛び交った。
ネットメディアBuzzFeedは2月1日に斉藤みち子女性部長のインタビュー記事、ケアネットは2日に女性部の調査結果を紹介する記事を公開した。(BuzzFeedの記事はこちらから)
医師増、性別役割分業解消が重要に
差別が完全に解消されたかどうかを見極めるためは、今後も経年的にデータを注視していく必要がある。面接や論文試験など、恣意的な点数をつけやすい受験科目が、女性受験生への減点につながる可能性もあるため、女性部は、引き続き全医学部の受験科目ごとの男女別成績などの調査・公表も求めることとしている。
さらに、今後女性医師が増加していけば、医師の過重労働を解消するための医師増員、性別役割分業の解消はますます重要な課題となる。保団連の細部千晴女性部担当理事は「変化が生じたのは、私たちが当初より問題意識を持って声をあげたから。これからも医療界をより良くするために頑張っていきたい」と話している。
(表1)医学部の男女別合格率
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(表2)男性の合格率が女性より高い医学部数と割合
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医学部入試での女性差別は昔からある都市伝説で、ニュースを知ったときは、「やっぱり本当だったのか」という感覚。驚きはありませんでした。
男女の合格率逆転は大きな前進ですが、率直に言って遅すぎるし、まだ差別が完全に解消したとも言い切れないでしょう。それに入試だけ平等にしても、徹夜に耐え、時にはうつ病になるまで働かなければならないような医療界のシステムを変えていかなければ、妊娠・出産する女性は医療界で生き残れません。
日本のジェンダー平等のゴールは未だ遠いところにあります。日本で初めての女性医師である荻野吟子などの先人たちは、苦労して、女性が医師として働く道を切り開いてきました。私たちもまだまだ闘いが必要です。
医学部入試での女性受験生に対する減点問題の発覚は、多くの男性が無自覚だった女性差別の実態の一端を明らかにしました。医師を目指す女性は、入試段階の差別だけでなく、医師になってからも妊娠・出産がハンディとなって活躍できない現状があり、これは社会的な損失だと思います。男女ともに人間らしく働けるよう、医師の過重労働をなくすための医師増が不可欠です。
医学部は、上下関係が厳しい家父長的なヒエラルキーがあり、その閉鎖性も様々な場面で女性を排除しようとする土壌になっているのではないかと感じています。男女別合格率を公表させ、入試という医学部の入口での差別を是正していくことは、ここに風穴を開け得る大きな意義のある取り組みだと思います。
以上