地域医療継続に全力
キット不足・職員感染・経営難 全医療機関支えるべき
(全国保険医新聞2022年3月15日号より)
検査キット不足、職員の感染と休業などオミクロン株拡大で各地の医療提供に支障が出ている。全国保険医団体連合会(保団連)と保険医協会・医会は、逼迫する医療現場の実態調査と行政への改善要請、マスコミへの発信などを進めてきた。政府は、昨年の診療報酬改定でわずかな本体引き上げに留めたが、コロナ対応の強化、医療再建に向け、すべての医療機関に対する診療報酬引き上げが不可欠だ。(詳報4、5面)
兵庫協会の今年2月の調査では、オミクロン株の拡大で職員が休業した診療所は医科・歯科とも4割に達した。外来、リハビリ、新患受け入れなどで制限を強いられている。抗原検査キットの在庫不足も全国的に深刻となっている。同協会調査でも、在庫ゼロと回答した医療機関が1割あった。
そうした中でも医科診療所の約6割が新型コロナ感染症の疑い患者を診療していると回答(図1)。診療・検査医療機関の指定を受けているとの回答は45%で、指定のない医療機関でもコロナが疑われる患者の診療に従事している現状が明らかとなった。
受診抑制が継続
一方、コロナ対応を含めて地域医療を支えている医療機関の経営は、コロナ禍の受診抑制の打撃から回復していない。
千葉協会が21年12月に実施した会員経営実態調査では、21年6月から11月の受診状況は、約3割〜4割の医療機関が20年同月と比べ「減少した」と回答した。
とりわけ耳鼻科は8割(昨年9月、10月)、小児科は5割が減少(昨年9月、10月)と深刻である。それ以外の診療科(産婦人科、眼科、歯科)でも受診減が続いている(図2)。比較対象とした20年はコロナ感染で既に受診抑制が発生しており、受診減、収入減が継続していることが分かる。受診抑制・収入減を主な理由として「今後の見通しが立たない」と「閉院も考えている」との回答が併せて14.5%に上った。
地域の医療機関は、重症化リスクのある高齢者に対する早期の検査と治療などコロナ対応に尽力しながら、通常医療を維持している。経営難から回復できなければ、新型コロナ対応も困難になりかねない。
医療現場の実態改善を要望
協会・医会、保団連は、コロナ対応で逼迫する医療現場の改善に向けてさまざまな取り組みを進めてきた。
大阪協会は、2月19日にマスコミ懇談会を開催し、「職員の感染が広がりコロナと闘う戦力が大きく削がれている」「一般の救急医療に大きな影響が出ている」などと訴えた。
京都協会は、「『みなし陽性』患者の診療対応の明確化」、「ワクチン交互接種の不安を解消するため自治体の広報強化を」「重症化・死亡リスクが高い高齢者施設への資材や医療提供の確保」などコロナ禍の医療確保に向けて地元自治体や国に要請している。
コロナ対策、医療再生に逆行
岸田政権は、昨年9月に感染予防対策実施加算を打ち切り、乳幼児感染予防策加算も今年3月末で廃止。検査料等を半額に引き下げるなどコロナ対策に逆行する政策を強行してきた。
さらに、昨年末、診療報酬の本体引き上げもコロナ前を下回るわずか0.43%に留めた。コロナで疲弊した医療を再建するためには程遠い水準である。
保団連は、検査体制・キット確保の強化や検査料等の引き上げ、公費での取扱いの改善と患者負担軽減等を厚労省に繰り返し要請してきた。また、全ての医療機関を対象にした感染症対策実施加算の復活などコロナ対応の強化と医療再建に向けて基本診療料など診療報酬の引き上げが必要だ。
図1 コロナ疑い患者を診療している
診療所(医科)の割合
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図2 外来患者数が前年同月比で「減少」と
回答した割合(40%以上の月は赤字)
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以上