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相次ぐ感染 家庭にも負担
細部小児科クリニック 細部 千晴氏
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(全国保険医新聞2022年3月15日号より)
東京都内で小児科クリニックを運営する細部千晴氏(写真)にオミクロン株の感染拡大小児や家庭への影響を聞いた。
繰り返される休校・休園
昨年末は、第5波も落ち着き、閑古鳥外来の中、年末年始の国民大移動で第6波と共にインフルエンザもきたら大変だろうと、何となく思っていました。年明けに保育園・幼稚園・学校が始まると徐々に発熱児が増え、例年のインフルエンザの時のような学級閉鎖・保育園休園が続いています。
インフルエンザの流行では学級閉鎖等である程度、収束が見込めましたが、このオミクロン株では数日学級閉鎖、保育園休園をしても、また陽性者が出るため、何度も学級閉鎖や休園が繰り返されます。1人の陽性者で休園という対応は働く親を苦しめています。
地域医療を担う現場が崩壊しないために濃厚接触者の定義が緩和されましたが、外来を短縮せざるを得ないクリニックも出ています。1月中旬頃から迅速抗原検査キットの入手が困難となり、検査もできなくなりました。「会社や保育園等に陰性証明を出してほしい」と間違った情報に振り回されている人々も多いようです。
世界での流行状況から第6波が来ることは分かっていました。昨年末に国が検査キットメーカーに対し、増産指示を出しておいてくれればこのような事態は生じませんでした。残念でなりません。
医療逼迫を回避するため「みなし陽性」という新しい診断方法が登場しました。対応は、地方自治体の判断となり、自治体間で取扱いに格差が生じています。
軽症多いとあなどれない
家族が順番に罹患していく点ではインフルエンザと同じですが、唯一、違うことは特効薬が子どもにはないということです。子どもは確かに軽症が多いですが、その中にはMIS-C(小児COVID-19関連多系統炎症性症候群)がおり、また、LongCOVID(コロナ後遺症)があっても表現できない子どもたちが一定数います。子どものコロナも「風邪」とは言わない方がいいと思います。「発熱」がコロナ由来なのか注意深く見守るのが、小児医療です。「みなし陽性」は心配です。
発熱外来、東京都に報告、HER-SYSへの入力、陽性者には架電と診療時間以外の仕事で、事務だけでなく医師も疲弊しています。そんな中3月からは小児用新型コロナワクチン接種が始まります。
幼児のマスク着用は感染抑止の観点から重要ですが窒息、嘔吐時の異変に気づくのが遅れる心配もあります。マスクで表情の変化がわかりにくいため、信頼できる大人との愛着関係を築くことが大事なこの年齢にマスクはさせたくありません。コロナ世代の子ども達の心の健康もとても心配しています。
以上