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公的保障の範囲縮小と医療の市場化めざす規制改革「中間とりまとめ」

       2004年8月5日
全国保険医団体連合会
政策部長 津田光夫 

                                                                               

 政府の規制改革・民間開放推進会議(議長・宮内義彦オリックス会長)は8月3日、年末の答申に向けた「中間とりまとめ」を決定し、小泉首相に提出しました。医療・介護・教育分野の7項目を最重点に位置づけ、「『利用者・消費者本位』の市場へ速やかに転換」との口実で、営利資本の参入に対する社会的規制を大きく後退させることを求めています。

 医療分野では「混合診療の解禁」をトップに掲げ、今年度中に全面解禁すべきと明記しています。中でも、患者が希望して高額の費用を出せば利用できる診療行為、予防的処置や保険適用回数等に制限がある検査は、「直ちに全面解禁」すべきと前倒しを求めています。小泉内閣の「骨太方針04」では、「公的給付の内容及び範囲の見直し」が重点課題に挙げられており、財務省財政制度等審議会の「建議」でも、「公的保険がカバーする範囲を根本的に見直し、保険診療と自由診療の組み合わせを拡大する」ことが中心に位置づけられています。公的医療の範囲と水準の縮小という方針と歩調をあわせた、今回の「混合診療」解禁の提案は、国が責任をもつべき医療に、将来にわたって「自由診療」という別枠が設けられ、保険給付が適用されないことになりかねません。医療保険制度の「2階建て」化に大きく舵を切るものです。国民の経済力格差をそのまま医療に持ち込むことになり、負担に耐えられない国民を皆保険制度の外に追いやるものといえます。

 第二に、「医療法人を通じた株式会社等の医療機関経営の参入」を提案し、医療法人に出資した株式会社が、社員として出資額に応じた議決権を認めるよう求めています。直接的な株式会社の参入は重点項目とはしていないが、これは、すでに構造改革「特区」で、株式会社が病院・診療所を開設することができる医療法等の特例規定が11月から施行されるからです。特区で「一定の効果」を得て、全国に普及していく計画と見られます。株式会社が医療法人への出資によって議決権を持つことになれば、医療法人の運営、医療機関や医療従事者の医療活動に大きな影響力を行使することが予測されます。公益性を確保すべき医療分野に、市場原理を原則とする営利資本を参入させることは、株主への利益配当を目的に、医療が手段とされることになりかねません。医療の質や安全性の確保、継続性が損なわれることが危惧されます。

 第三に、介護保険についても、施設介護に給付されている居住費や食費をすべて自己負担とし、在宅サービスの介護コストと同一にするよう提案し、通所介護の食費、調理のコストも利用者負担としています。これも、小泉内閣の「骨太方針04」が打ち出した「『ホテルコスト』、食事等の利用者負担の見直し」にそったものであり、利用者に新たな負担を強いる「利用者・消費者本位」とは言い難い「規制改革」です。

 政府、財界が推し進める「構造改革・規制改革」路線は、医療・介護分野など国民の健康や生活に必要な公的保障の範囲と水準を縮小し、その一方で、営利資本を参入させ市場原理に委ねようとするものであり、断じて容認することはできません。国民の生存権、健康権を保障する医療・介護保険制度の充実に向けて、「速やかに転換」することが求められています。