2004年12月16日 厚労相と規制改革相は12月15日、「いわゆる『混合診療』問題に係わる基本的合意」をまとめました。最大の問題点は、「保険外の負担の在り方を根本的に見直し」として、特定療養費制度を含めた患者負担を見直し、部分解禁から大幅解禁、実質解禁へと足を踏み出したことです。 衆参両院が全会一致で採択した請願趣旨を無視した「合意」は、皆保険医療を崩壊に導くものであり断固抗議するものです。また規制改革・民間開放推進会議には、年内に予定する「答申」に合意内容を盛り込まないことを要求します。今回は、「一定水準以上の医療機関」への包括的解禁という「全面解禁」は合意に至らなかったが、政府が06年の通常国会に提出予定の法案策定に向けて大きな争点となることは必至です。健保法の根幹に係わる問題であり、国会の場で十分な審議を行うべきです。 合意内容は、第一に、公的保険と並立した将来とも保険導入しない保険外医療という区分を新設、第二に、療養の給付と直接関係のないサービス等については、将来とも保険適用は行わない、第三に、保険導入のための評価を行う医療技術等という新たな段階を設け、保険導入検討の条件とすることなどです。こうした新たなルールの確立によって、患者、国民にとって必要な医療が、保険適用されないまま放置され、保険外負担が拡大されることが危惧されます。 第一の問題点に係わっては、医療本体部分である「制限回数を超える医療行為等」(ピロリ菌の3回目以降の除菌など)が保険外医療の対象とされましたが、これは、医療給付の一体性を保障してきた「現物給付」原則を崩す「技術料差額」方式の全面導入であり容認することはできません。 さらに黙過できないことは、この方向は、「180日超の入院」のような公的保険給付外しへ活用される可能性があることです。経済財政諮問会議が検討している風邪などの「軽度医療」や市販類似医薬品の保険給付外しのための受け皿が用意されたものと考えられます。 第三の問題点に係わっては、新規技術を保険導入する前に必ず一定期間は保険外負担をさせるというルールを「必ずしも高度でない先進技術を含め」た医療技術にまで範囲を拡大して導入することです。これは、厚労省自らが認めているように、「混合診療を実質的に解禁」するものです。当面は、約100の医療技術を認め、約2000医療機関が対象になるといいますが、適用される医療技術の範囲が明確ではなく今後、拡大される可能性が高いといえます。 またこれは、厚労省が定めた「一定の水準の要件」を満たせば、診療所を含めて実施が可能とされていますが、04年診療報酬改定で踏み出した、医療機関の機能と技術を相対的に判断し、診療報酬上の格差をつける流れが一層強まることは避けがたいといえます。 今、公的医療保険制度と医療提供体制を、市場原理を強化する方向で再編し、公私2階建ての階層型医療制度に転換することや、社会保障給付費の総額管理を導入することが計画されていますが、今回の「合意」は、この流れを規制改革派の圧力を活用する形でさらに具体化させたものです。国民と我々医療担当者が求めるのは、公的医療保険の範囲を限定、縮小していく方向ではなく、憲法25条に基づく皆保険医療の充実、すなわち『保険証1枚』で安心してかかれる医療保険制度を実現することです。 以上
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