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国民の健康を利潤追求の目的とする株式会社医療機関は認められません

                            2005年6月30日
全国保険医団体連合会
副会長 住江 憲勇

 神奈川県が申請していた構造改革特区での「株式会社医療機関」開設に対して、尾辻厚生労働大臣は29日、計画内容に同意、小泉首相が7月にも特区計画を認定する見通しとなりました。バイオ分野のベンチャー企業「バイオマスター」社が、再生医療の美容外科クリニックを横浜市内で開設するとしています。

 我々は、たとえ自由診療でかつ「高度な医療」に限られたとしても「株式会社医療機関」の開設は断じて認められません。厚労大臣の同意撤回を強く求めるものです。

 そもそも、自由診療に限る、限らないに関わらず、公益性を確保すべき医療分野に、営利資本を参入させるということは、医療を営利サービスへと転換させることであり、国民の健康や生命を利潤追求、株主への利益配当の目的とすることにほかなりません。人件費を中心とするコストダウン競争などによって、医療の質(安全性を含む)の確保、継続性が損なわれることや、診療内容の制限、患者の選別など、患者にとって当然の医療が提供される条件が損なわれることが強く危惧されます。

 しかも特区は、「一定の効果」が得られれば、全国に普及することが目的です。全国規模での参入解禁となれば、いずれ外国の営利資本との提携や参入を招くことになり、その影響ははかり知れません。

 まして、再生医療分野は国内だけでも少なくとも1〜5兆円規模の市場と産業界から期待されています。また、再生医療を皮切りに先端医療技術にも特許権が認められており、特許は使用料を派生させ、普及を阻むものとなります。再生医療を含む新たな医療技術の進歩は、安全性・有効性が確立された段階で、広くあまねく保険医療に導入すべきです。

 さらに、北海道旭川市は、三井物産と共同で、「実質的な混合診療である高度先進医療を実施」する株式会社経営の病院開設を盛り込んだ構造改革特区を申請すると報じられています。こうした要求が高まり、今後の政府内での検討いかんでは、「混合診療」の分野にも対象が拡大されることが懸念されます。

 国民医療に必要な規制までも緩和・撤廃し市場原理に委ねることは、医療を日本や米国をはじめとする営利資本の新たな市場にしようとするものです。国民の健康と健全な社会の発展のためにも、医療の「非営利原則」を堅持し、『保険証1枚』で安心してかかれる医療制度への政策転換を図るべきです。