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公的医療の縮小につながる「制限回数を超える医療行為」実施決定に抗議します


2005年9月2日
全国保険医団体連合会
診療報酬改善対策委員会
担当副会長 宇佐美 宏


 2005年8月31日に開かれた中医協総会は「制限回数を超える医療行為」の保険給付との併用について、これまで議論されてきた28項目のうち、「腫瘍マーカー(AFP、CEA)」、「理学療法(個別療法)」、「作業療法(個別療法)」、「言語聴覚療法(個別療法)」、「精神科デイ・ケア」、「精神科ナイト・ケア」、「精神科デイ・ナイト・ケア」の7項目を対象とし10月1日から実施することを決めました。

 この決定は、公的医療保険の守備範囲縮小への第一歩であり、保険と保険外の併用を認める「混合診療」を日常診療に持ち込む重大な内容です。また、医療の標準化、算定制限の固定化を進める足がかりとなります。このことは国民皆保険制度の根幹である「現物給付」原則を切り崩すものであり、断固抗議します。

 中医協の医療技術評価分科会で委員が「医師として患者に負担してくれとは言いづらい。絶対に言えない」と発言したのに対して、麦谷医療課長は患者負担をとれる武器ができたと強弁しましたが、このような方向に一歩踏み込んだものであり、「混合診療」の拡大への突破口となる危険性があるといわざるを得ません。

 また、これまでの中医協の議論にもあったように「本来、医療上必要な行為は保険給付されるべき」です。「医療上の必要性がほとんどない」にもかかわらず、「患者の要望」「患者の自由な選択」のもと、制限回数を超えて医療行為が行われることは重大であり、医師の裁量権の否定につながるものです。

 今回の決定に至るまでに、保団連をはじめとした医療界からの批判や疑問の声に押され、結論を約1カ月先延ばししましたが、結果的に7項目を「混合診療」化したことは大変遺憾であり、この取扱いを直ちに凍結し、他の136項目もあわせた全てについて医学的に十分検証しなおし、「混合診療」拡大の方向ではなく、必要なものは保険給付するよう改めるべきです。

 そもそも制限回数は、2002年のマイナス改定の際に、医療給付の抑制のため大幅に導入されたものであり、医療上の観点よりも経済的理由で実施されているものが多い。本来、治療行為は個々の患者の状態において医師が判断すべきもので、経済的理由による規制はなじまないものです。その改善を棚上げしたまま、7項目が実施に移されることは本末転倒であり、到底容認できません。

 私たちはこの制限回数を超える医療行為の「特定療養費化」、「混合診療」の拡大に抗議するとともに、制限回数について医学的に十分検証しなおし、必要なものは保険給付するよう要求するものです。

以上