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医療現場の実態を踏まえ、実効性のある医師不足対策を求めます



2006年7月25日
全国保険医団体連合会
副会長・政策部長 津田 光夫


 7月19日に開催された厚生労働省の「医師の需給に関する検討会」がまとめた「報告書案」の最大の特徴は、2025年度までに医療給付費を8兆円規模で抑制することを目標とした医療「改革」関連法を、医療提供体制と医師需給において具体化、実施するための対策が盛り込まれたことです。

したがって、全国各地の病院で産婦人科や小児科等で医師が不足し、診療をやめたり、病院そのものが閉鎖される事態が相次いでいるにも係わらず、2020年以降は全体の需給バランスが改善されるとの推計を根拠にして、今後、医師不足が深刻化する15年〜20年間を、医療提供体制の「集約化・重点化」と医師業務の「効率化」等で乗り切る対策を打ち出しました。今日の医療現場の実態とかけ離れ、地域医療の崩壊に拍車をかけることが強く懸念されます。

大学医学部の入学定員増についても、「養成には時間がかかり、多額の国費も投入される」と否定的であり、医師不足が切実な地域に限定した暫定的な調整にとどめる考えです。

しかも、自己研修、研究や待機・休憩時間を「勤務時間」とみて、週48時間に短縮した場合、2004年において6万1千人の医師が不足するとの推計を明らかにしながら、自己研修や待機・休憩などは「通常は勤務時間とはみなされない時間」であると退けています。この推計に基づく養成策について検討を行い、「報告書」に盛り込むべきです。

これまでも政府は医師の需給バランスについて、2025年度には全医師の1割程度が過剰になるとの将来推計に基づいて、医学部の入学定員を削減するなど、医師の養成を抑制し続けるとともに、低診療報酬を押しつけてきました。

その結果、医師不足の矛盾が噴出し、大きな社会問題となる一方、わが国の人口千人当たりの医師数は1.98人で192カ国中63位にとどまっており、すべての都道府県でOECD諸国の平均医師数を下回る水準となっています。

今後、国民が必要としている医療を確実かつ持続的に提供していくことができるよう、政府に対し、@医師の養成に対する公的責任を明確にして、国費の投入により必要な医師数を確保する、A削減してきた医学部入学定員を増やし、「地域枠」を各都道府県の実情に応じて引き上げることを認める、B医師の労働条件の整備を推進し、とくに女性医師の出産・育児・介護支援のための施策を講じる、C低診療報酬の改善、D金融・税制面での支援措置を講じる、などの点について、実効ある対策に速やかに取り組むことを強く求めるものです。

以上