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※全国保険医団体連合会では、日本経済新聞社編集局に「日本経済新聞7月18日付『子ども医療費助成どこまで』に抗議します」を送付いたしました(PDF版はこちら[PDF:232KB])。

【抗議声明】日本経済新聞7月18日付
「子ども医療費助成どこまで」に抗議します


2018年8月3日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 日本経済新聞7月18日付5面に「子ども医療費助成どこまで」との題で、全国で子ども医療費助成制度が拡充されていることについて取り上げ、「安易な助成は医療費の膨張に拍車をかける」との記事が掲載されました。日本経済新聞が同様の記事を掲載するのは、この1年間で3回目です(17年8月1日、18年6月7日、7月18日)。
 昨年8月の記事に対して本会は、「医療費膨張」が起きていないことを、具体的に無料化を行っている自治体の実績をあげて説明し、理解を求めました(2017年8月9日「【要望】日本経済新聞8月1日記事への意見と要望」)。しかし、その後も明確な根拠を示すことなく事実とかけ離れた主張が繰り返されています。意図的に世論を歪め、助成の拡充を進めようとしている自治体にブレーキをかけようとしているのではないかとの疑念すら抱いてしまいます。世論に大きな影響を与えるマスコミとして、事実に基づく正確な報道を強く求めます。

 

子ども医療費助成によって、「医療費膨張」は起きていない

 この間の記事全体の主張として、子ども医療費助成制度が全国で拡充されることで、「医療費の膨張に拍車をかける」とされています。しかし、先にも指摘したように、記事には医療費膨張の明確な根拠は示されていません。唯一引用しているのは厚労省が2012年度(平成24年度)予算をベースに試算した「患者負担を無料化した場合の影響額」(2016年2月25日第4回子どもの医療制度の在り方等に関する検討会資料)の高校卒業まで無料化した場合「8,400億円」医療給付費が増加するという数字です。しかし、この8,400億円のうち、記事が指摘する「受診が増える」ことによる医療費増、いわゆる「波及増分」は3,000億円です。残りの5,400億円は患者負担の減少分の金額で、医療給付費が「膨張」した金額ではありません。
 「波及増分」についても、中学校卒業まで無料化した場合で2,400億円と試算されていますが、すでに中学卒業まで助成をする自治体が9割にまで広がっている状況で、本当に新たにこれだけの「波及増」が生じるのか大いに疑問です。
 当会の調査では、子ども医療費助成制度が拡充されてきたもとでも、子どもの時間外受診の件数は減少傾向にあることが明らかになっています(2017年12月6日「子ども医療費助成制度の推移と患者の受診動向の分析」)。医療費助成の拡充によって受診しやすくなり、重症化が予防された結果と見ることもできます。子ども医療費無料化によって、必要な受診が確保されると考えるべきではないでしょうか。

 

国の責任で子ども医療費無料化を

 子ども医療費助成制度について考える時、経済的理由などによって受診できない子どもたちがいるという事実から出発すべきと考えます。
 当会の加盟団体が行った学校歯科治療調査では、学校の歯科検診で要治療とされた子どもの約半数が未受診、「口腔崩壊」の子どもがいる学校が約4割あることが明らかになっています(2018年6月7日「学校歯科治療調査中間報告」)。未受診の理由は経済的理由、親の多忙など様々ですが、少なくとも子ども医療費助成制度などをより充実させ、経済的理由による受診抑制をなくすことが緊急に求められています。
 子どもは病気にかかりやすく、抵抗力が弱いため重症化する心配も多く、病気の早期発見・早期治療を支える環境が非常に大切です。その一つとして、子どもの医療費の心配をなくすことは、大きな子育て支援になります。
 すべての子どもたちの健やかな成長を支えるために、国が責任をもって子どもの医療費負担を無料にすべきです。

以上