※全国保険医団体連合会では、下記の要望書を発表し、厚労大臣及びマスコミ各社に送付いたしました。(PDF版はこちら[PDF:330KB]

【要請書】コロナ禍から医療を守るため、重症度、医療・看護必要度等の
経過措置延長と、全ての医療機関への施設基準の特例措置をはじめとした
対策を求める緊急要請書
コロナ禍における2,050病院への施設基準影響調査を踏まえての緊急要請)

2021年3月5日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 国民医療の確保に対するご尽力に敬意を表します。
 さて、8月31日の厚生労働省事務連絡では、新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関であっても、「緊急事態宣言」の期間については、施設基準に係る要件を満たさなくなった場合であっても、引き続き、当該施設基準を満たしているものとして取り扱うこととすることとされました。
 しかし、「緊急事態宣言」は3月7日で終了が予定されており、このままでは新型コロナウイルス感染症患者等を受け入れていない医療機関は、4月以降は特例措置の対象から除外され、地域医療に大きな影響が生じてしまいます。
 さらに、@重症度、医療・看護必要度、A回復期リハビリテーション病棟入院料における「リハビリテーションの効果に係る実績指数」、B地域包括ケア病棟入院料における「診療実績」については、令和3年3月31日まで経過措置の延長を実施していただいていますが、現在の医療現場は経過措置の延長を決めていただいた8月下旬よりもさらに厳しい状況となり、「予定入院・予定手術」の延期を余儀なくされている病院が少なくありません。
 保団連では、コロナ禍における施設基準の充足状況や現場の意見を把握するため、2021年1月7日から2月下旬にかけて施設基準管理調査を実施しました。調査は45都道府県の5,580病院に調査票を送付し、2,050病院から回答(回収率36.7%)をいただきました。これは、公立・公的病院を含む全8,237病院(令和2年12月末現在数)の24.9%にのぼります。調査では公立・公的病院からも多く回答をいただき、施設基準管理に大変な困難を抱えていることがわかりました。
 調査結果を別添させていただきますので、コロナ禍から地域医療を守るため、重症度、医療・看護必要度等の経過措置延長と、全ての施設基準への特例措置をはじめとした緊急要請事項の実現を、強く要望いたします。
 なお、影響調査のまとめと厚生労働省あて緊急要望書と、調査結果の集計表、調査票などは、ホームページに掲載しておりますのでご参照ください。

緊急要請事項

1. 重症度、医療・看護必要度等の経過措置の延長

(1) 令和3年3月31日まで経過措置を延長した@重症度、医療・看護必要度、A回復期リハビリテーション病棟入院料における「実績指数」、B地域包括ケア病棟入院料における「診療実績」について、経過措置の再延長を行うこと。

2. 全ての医療機関の施設基準に特例措置を設けること

(2)-1  「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、全ての施設基準が大きな影響を受けていることから、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間は、全ての医療機関の既届出施設基準について、当該施設基準を満たしているものとして取り扱い、適時調査再開時に自主返還の対象にしないこと。少なくとも診療・検査医療機関は特例措置の対象にすること。
(2)-2  施設基準にかかる要件だけでなく、診療報酬算定要件についても弾力的な対応を行うこと。

3. 診療報酬の特例について

(3)-1  新型コロナウイルス感染症収束まで、感染対策のための費用を補填するため、全ての入院料等を引き上げること。
(3)-2  コロナ専門病院の診療報酬をさらに引き上げること。
(3)-3  コロナ専門病院以外の入院医療機関における新型コロナウイルス感染症患者に対する診療報酬を、大幅に引き上げること。
(3)-4  新型コロナウイルス感染症患者(疑似患者含む)を受け入れる病室については、医療法上の病床区分や都道府県からの割り当て病床であるか否かに関わらず、看護配置等の要件を満たせば急性期一般入院料を算定できる扱いとすること。
(3)-5  新型コロナウイルス感染症患者(疑似患者含む)を受け入れた医療機関については、当該患者受入による他の患者の転床時に対して、当該感染症患者と同様の算定対応(2020年2月14日付事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その1)」)を認めること。
(3)-6  自宅療養やホテル療養を行う新型コロナウイルス感染症患者に対する診療報酬を大幅に引き上げること。
(3)-7  救急搬送患者への対応には特段の感染対策が必要であり、これを診療報酬で評価すること。
(3)-8  「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱い」のすべてを整理して明示すること。

4. 財政措置を早急に行うこと

(4)-1  医科・歯科全ての医療機関について、実質的な減収を補填する財政措置を緊急に行い、少なくとも感染拡大による損失(赤字)が生じないようにすること。感染防止対策に対する補助金の対象・金額を拡大し、改めて支給すること。
(4)-2  医療・歯科医療に携わるすべての従事者を対象に改めて慰労金を支給すること。補助金の請求方法を簡素化し、丁寧な案内を行うこと。介護や障害者福祉サービス事業所についても同様に取り扱うこと。
(4)-3  新型コロナウイルス感染症患者の入院治療等を担う病院が赤字にならないよう、また、新型コロナウイルス感染症患者に対応する職員の尽力や身体的・精神的負担に報いることができるだけの給与・賞与が十分に支払えるよう、必要な財政措置を行うこと。
(4)-4  感染防護具・衛生材料等の価格高騰を抑え、購入について国・自治体で援助すること。

5.全ての入院・手術等患者や職員へのPCR検査を公費で実施できるようにすること

(5)-1  入院時及び入所時、手術や胃カメラなど感染の危険が高いと想定される行為の予定者全員について医師の判断でPCR検査等実施ができるようにすること。
(5)-2  PCR検査等の検査料・判断料を引き上げること。
(5)-3  医療機関、介護・障害者福祉サービス事業所の職員について定期的に公費による検査を実施すること。
(5)-4  希望する誰もが費用の心配なくPCR検査等を実施できるようにすること。

6. 受診抑制をなくすこと

(6)-1  受診抑制は、国民の健康に悪影響を及ぼしている。受診控えが拡大しないよう、感染予防・疾病の重篤化予防の大切さ、医療機関は感染対策を徹底していることなどを紹介しながら、国、行政によるテレビ、新聞、ネットなども活用した受診、予防接種、健診を呼びかける広報活動を行うこと。
(6)-2  低所得者(収入が低下した者を含む)が医療・介護を受けられるよう、公費により窓口負担を軽減すること。通常の国保証をすべての加入者に届け、国保資格証明書の交付を止めること。
(6)-3  無保険者をなくすこと。当面無保険者であっても通常の医療が受けられるようにし、受療案内を徹底すること。
(6)-4  生活保護審査を簡素化するとともに、保護要件を大幅に緩和すること。

7. 保健所、地域外来・検査センターへの予算を増額し、機能強化を図ること

(7)-1  保健所等が担ってきた相談・検査体制の縮小や、民間医療機関への丸投げを止め、新型コロナ感染症に対応する保健所等の人員と予算を大幅に増やし、全国どこでも無症状感染者の把握、感染追跡、相談・検査が実施できるようにすること。
(7)-2  地域の医師・医療従事者が協力して検査を行う「地域外来・検査センター」を増やすこと。そのため、設置・運営費用について、国が全額を負担し、出務する職員等に十分な給与・出務費を保障すること。

8. 診療・検査医療機関への補助金制度等の抜本的改善

(8)-1  発熱外来に対する補助金制度を抜本的に改善し、少なくとも、「診療・検査対応時間」において通常の患者を診察した場合に、「発熱外来診療体制確保支援補助金」を減額する取り扱いを止めること。
(8)-2  発熱外来やコロナ対応病床において、職員への危険手当の制度化や、感染した場合の休業補償、損失補填を行うこと。

9. 新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法は慎重な運用を行うこと

(9)-1  新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法の罰則規定の摘要は慎重に行うこと。
(9)-2  コロナ病床確保のための協力要請に応えられない病院名を公表しないこと。新型コロナ感染症患者を受け入れられない医療機関も、新型コロナ感染症以外の治療を必要とする患者を沢山抱えている。新型コロナ感染症患者を受け入れればこうした患者から必要な医療を奪うことになりかねず、医療機関は苦渋の選択を強いられる。医療機関を公表するような強制的・強権的な政策は、新型コロナ感染症対策とは真逆の悪政であり、絶対に実施すべきではない。

10. 公立・公的病院等の再編統合、急性期病床を中心とする病床削減計画を中止すること

(10)-1  公立・公的病院等の再編統合、急性期病床を中心とする病床削減計画を直ちに中止すること。
(10)-2  医療供給体制を弱体化させる地域医療構想の検討は直ちに凍結し、地域医療構想を前提とした医師・看護師需給計画を抜本的に見直すこと。少なくともOECD平均に遜色のない医師数を確保するため、公的責任で必要医師数の養成を行い、医師不足の解消を図ること。看護師をはじめとした医療従事者の養成に公的責任を果たすこと。

11. 感染症対策の抜本的強化を行うこと

(11)-1  新型コロナウイルス感染症治療薬やワクチンは、国として有効性・安全性をしっかりと検証するとともに、有害事象が発生した場合の補償・治療をしっかりと行うこと。
(11)-2  コロナ禍によって日本の社会保障制度の脆弱性が露呈された。充実した社会保障こそ、感染症対策の基本である。すべての人が必要な医療・歯科医療、介護・福祉サービスを受けられるよう、社会保障を抜本的に拡充すること。
(11)-3  国立感染症研究所の機能強化を行うこと。日本版CDC(疾病予防管理センター)を創設し、感染症に対応できる仕組みを構築すること。

以上

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