コロナ禍における病院の施設基準への影響調査のまとめと
厚生労働大臣への緊急要請について
2020年3月5日
全国保険医団体連合会
病院・有床診療所対策部
部長 吉中 丈志
全国保険医団体連合会(医科・歯科保険医108,000人)では、1月中旬から2月下旬にかけて45都道府県の保険医協会・保険医会の協力の下で、5,580病院に調査票を送付させていただき、2,050病院からご回答(回収率36.7%)をいただきました。
ご協力いただきました病院に、心より感謝申し上げます。
調査では、コロナ禍によって、いずれかの施設基準を満たせなくなった(又は満たせなくなる恐れのある)病院が42.2%にのぼり、これに「(満たせるかどうか)わからない」との回答を加えると、51.0%に達することがわかりました。
原因は、@スタッフの確保が困難(598病院)、A入院患者数の減少(564病院)、B外来患者数の減少(380病院)、C転院等他医療機関との調整が困難(318病院)、D新型コロナ感染症患者を受け入れたため(294病院)、E院内で新型コロナウイルスの感染者が発生したため(259病院)、F高齢者施設等、退院先の新規受け入れが停滞しているため(198病院)、G訪問診療など在宅への訪問回数が減っている(65病院)の順でした。
自由記載欄では、「体調不良の職員は、予防的に出勤停止」、「家族等が発熱しても出勤停止」など、スタッフの数は確保できていてもコロナ禍が原因で実際の出勤ができないために要件を満たさないという回答も多くみられました。また、「手術・検査の制限・延期」をはじめ、様々な原因が記載されています。
これらのことから、条件を絞って施設基準の特例・緩和措置を行うやり方ではなく、コロナ収束までの期間は、一律に特例・緩和措置を実施することの必要性が改めて明らかとなりました。
コロナ禍によって、受診動向が大きく変化するとともに職員の勤務状況にも多くの影響があり、施設基準を満たせない状況が広がっています。施設基準が満たせなくなって当該点数を算定できなくなれば、患者さんに必要な医療が提供できなくなってしまいます。
このため、厚生労働省も特例措置を設けていますが、「緊急事態宣言」が発令された月以外は、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていなければ特例措置の対象になりません。しかし、コロナ患者を受け入れていなくても患者の受診動向や職員の勤務状況は大きな影響を受けています。
自由記載欄では、@「緊急事態宣言」の有無にかかわらず、全ての医療機関の施設基準についてコロナが収束するまでの間は、施設基準を満たしているとみなすこと、A重症度・医療・看護必要度の経過措置を延長すること、B減収補填を実施するとともに、補助金・支援金の額を引き上げ、再度交付すること、C患者・職員へのPCR検査を徹底すること、D感染防護具の価格抑制と確保等を求めるご意見などが沢山よせられています。
こうしたことから全国保険医団体連合会では、調査結果を踏まえて、@重症度、医療・看護必要度等の経過措置の延長、A全ての医療機関の施設基準に特例措置を設けること、B診療報酬の特例の更なる改善、C減収補填や感染防止対策などの財政措置、D入院・手術等の患者や職員へのPCR検査の徹底、E受診抑制をなくすこと、F保健所、地域外来・検査センターへの予算を増額し、機能強化を図ること、G診療・検査医療機関への補助金制度等の抜本的改善、H新型インフルエンザ等対策特別措置法及び感染症法の見直し・慎重な運用、I公立・公的病院等の再編統合、病床削減計画の中止、J感染症対策の抜本的強化を求める緊急要請書を3月5日に政府・厚生労働省に提出しました。
アンケートには国立病院や公立病院を含む2,050病院にご協力をいただきました。ご協力に改めて感謝を申し上げます。
保団連では、調査の目的である重症度、医療・看護必要度等の経過措置の延長、全ての施設基準への特例措置の実現をはじめ、医療機関が地域で必要な医療が提供できるよう全力をつくしてまいります。
以上