※全国保険医団体連合会では、下記の談話を発表し、総理、財務大臣、厚労大臣、外務大臣、ワクチン担当大臣、コロナ担当大臣及びマスコミ各社に送付しました。(PDF版はこちら[PDF:312KB])
【要請書】新型コロナウイルス感染症から、国民の命と健康を守るため、
医療・歯科医療、介護・障害者福祉の確保を求める要請書
2022年1月24日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
新型コロナウイルス感染症拡大阻止と、医療提供体制確保へのご尽力に敬意を表します。
しかし、昨年12月24日に閣議決定した2022年度予算(案)では、医療や検査、保健所の拡充をはじめとした新型コロナウイルス感染症対策は全く不十分であり、社会保障費の自然増を2,200億円も削ろうとしています。
特に、2022年度診療報酬改定をネットで0.94%のマイナス改定としたことは、長年にわたる公的医療費抑制政策の下で疲弊し、さらにコロナ禍で大きく傷ついた医療提供体制の再建・拡充に背を向けるものです。また、コロナ禍のなかで病床削減をさらに推進することを前提とし、2022年10月からは75歳以上の高齢者の医療費窓口負担を2倍化しようとしています。これはコロナ禍の教訓に逆行するものであり、断じて容認できません。
昨年11月5日に会計検査院が公表した決算検査報告では、新型コロナウイルス対策で国の予算が22.8兆円も未執行だったことがあきらかとなりました。未執行は、政府が必要と認めた国民への援助、医療機関や介護事業所への財政措置が予定通り実施されていないことを意味するものです。
新型コロナウイルス感染症が急拡大し、第6波に入りました。しかも、感染の主流はオミクロン株であり、第5波を超える急激な感染拡大となっています。
今、政府に求められることは、感染症に強い医療制度、社会づくりです。そのためには、政府が全ての感染者を把握・保護するために必要な検査体制の拡充や、医療提供体制の抜本的な拡充と財政措置を積極的に行うことが必要です。また、医療はもとより、公衆衛生、介護、福祉をはじめとした社会保障全般を充実させること、コロナ禍で仕事を奪われた労働者や倒産・休業を余儀なくされた事業者への支援策の拡充も不可欠です。22.8兆円の未執行分は国民生活の確保に使うべきです。
なお、在日米軍が一方的に検疫措置を緩和し、出国時の検査を実施せず、かつ、マスク無しで基地の外で飲酒していたことも感染拡大の大きな要因です。在日米軍が日本国民の命と暮らしを脅かすことのないように強く改善を求める必要があります。
当会では1月13日に「オミクロン株の感染拡大から国民の命と健康を守るための緊急要望」を行ったところですが、改めて、次の事項の実現を強く求めるものです。
記
1.ワクチン接種を含めた予防の徹底を行うこと(1月13日要請済み)
(1) |
3回目のワクチン接種を自治体や医療従事者に丸投げするのではなく、最大限、迅速な接種計画の前倒し策定と実施に国が責任をもって取り組むこと。 |
(2) |
国としてワクチンの有効性・安全性をしっかりと検証するとともに、有害事象が発生した場合の補償・治療体制を構築すること。 |
(3) |
国が医療機関に支払う新型コロナウイルスワクチンの接種費用を、少なくとも初診料と同額(2,880円)とし、時間外や休日は、初診料の時間外加算(850円)、休日加算(2,500円)と同額を上乗せすること。12歳未満児に対する加算を設けること。訪問診療とは別日に在宅でワクチンを接種する場合は、往診と同額を加算すること。 |
(4) |
マスク、手洗い、消毒、3密回避など、感染対策の徹底を改めて全ての国民に訴えること。これが実現できるよう、感染防止対策の費用を全ての国民、教育機関、医療機関、福祉施設、高齢者施設、中小企業等に支給すること。 |
(1) |
オミクロン株拡大を踏まえ、診療・検査医療機関に限らず、希望する全ての医療機関でPCR検査が公費負担で実施できるようにすること。 |
(2) |
検査の結果が、陰性か陽性かにかかわらず初・再診料、検体採取料、院内トリアージ実施料、二類感染症患者入院診療加算など新型コロナウイルス感染症検査に不可欠な診療費用についても、患者負担が発生することなくすべて公費負担とすること。 |
(3) |
PCR検査の診療報酬点数の大幅な引き下げは、検査体制の弱体化につながる危険性がある。検査が赤字とならないよう、検査料・判断料を引き上げること。 |
(4) |
全ての医療機関、介護保険施設・障害者施設等の職員及び入院・入所者については、定期的なPCR検査を全額公費負担により実施できるようにすること。 |
(5) |
教育機関の職員及び園児・児童・生徒・学生についても、定期的なPCR検査を全額公費負担により実施できるようにすること。 |
(6) |
無症状者を含めた希望するすべての人が費用負担なくPCR検査を実施できるよう、検査キットの確保・検査体制の確立に責任を持つこと。 |
3.治療体制の確保・拡充を図ること(1月13日要請済み)
(1) |
保健所の体制を強化し、公立・公的病院など病床削減計画を見直すこと。 |
(2) |
中等症以上及び重症化リスクのある軽症患者が入院治療を受けられるよう、コロナ対応病床の確保及び、当該医療機関に必要な報酬を支払うこと。 |
(3) |
軽症患者等を対象とするホテル等を借り上げた宿泊・療養施設の十分な整備と、必要な医療スタッフ配置、往診体制の確保に責任をもち、必要な報酬を支払うこと。 |
(4) |
自宅療養を余儀なくされる人の健康観察やケアの提供に万全を期し、重症化の発見が遅れないようにするとともに、生活を保障する措置を行うこと。 |
(5) |
外来等感染症対策実施加算、入院感染症対策実施加算を復活すること。乳幼児感染予防策加算の減額・廃止を撤回すること。 |
(6) |
施設基準を含めた診療報酬の臨時特例措置を感染収束まで継続すること。 |
4.在日米軍が日本国民の命と暮らしを脅かすことのないようにすること(1月13日要請済み)
(1) |
在日米軍に入管法や検疫法を適用させること。入国禁止・外出禁止含めた感染防止対策を徹底させること。 |
(2) |
基地内の感染状況を速やかに自治体に報告させるとともに、自治体と協同して感染の拡大防止に努めさせること。 |
(3) |
在日米軍からの感染再発防止のためにも、日米地位協定を抜本的に改正すること。 |
5.下記の財政措置等を実施すること(1月13日要請済み)
(1) |
実質的な減収を補填する財政措置を緊急に行い、少なくとも感染拡大による損失(赤字)が生じないようにすること。 |
(2) |
今後の感染拡大による減収に対して、迅速、簡便な減収補填策として、過去の診療実績をふまえた診療報酬支払時の補填を希望する医療機関に認めること。 |
(3) |
感染拡大局面において、医療・歯科医療従事者をはじめ、すべてのエッセンシャルワーカーを対象に、改めて慰労金(感染拡大特別手当)を支給すること。 |
(4) |
雇用調整助成金の特例措置、家賃支援給付金制度を継続し、支給要件を緩和すること。持続化給付金は再支給し、事業規模に応じた金額とすること。 |
(5) |
自治体が独自に医療機関への支援策が実施できるよう、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金や地方交付税の増額など行うこと。 |
(6) |
減収著しい専門科への財政措置を強化すること。 |
6.受診抑制をなくすために、次の対策を行うこと
(1) |
2022年10月に予定されている75歳以上の窓口負担2割化を止めること。 |
(2) |
生活保護審査を簡素化し保護要件を大幅緩和すること。扶養義務照会をやめること。 |
(3) |
通常の国保証をすべての加入者に届け、国保資格証明書の交付を止めること。 |
(4) |
新型コロナ感染症は未曽有うの災害である。国保料・介護保険料の引き上げをやめ、国保法44条減免・77条減免を活用し、低所得者及び収入が減少した世帯については、医療保険・介護保険の保険料・患者負担・利用者負担の徴収を直ちに免除すること。 |
(5) |
妊産婦や子どもの受診抑制をなくすためにも、18歳までの子どもの窓口負担無料制度と、妊産婦の窓口負担無料制度を国の制度として創設すること。 |
(6) |
無保険者をなくすこと。当面無保険者であっても通常の医療が受けられるようにし、受療案内を徹底すること。 |
(1) |
感染の拡大によって濃厚接触者が増加し、医療従事者をはじめとしたエッセンシャルワーカーの不足が深刻化している。エッセンシャルワーカーへのワクチン接種の前倒し実施や、感染拡大地域への人材派遣を強力に推し進めること。 |
(2) |
新型コロナ感染症そのものの調査・分析を含め、オミクロン株の疫学的特徴及び重症化リスクの分析・評価を行うこと。 |
(3) |
ワクチン・検査パッケージ制度による飲食やイベント、人の移動等の各分野における行動制限の緩和は、当面中止すること。 |
8.感染症対策の抜本的強化を図ること
(1) |
コロナ禍によって日本の社会保障制度の脆弱性が露呈された。充実した社会保障こそ、感染症対策の基本である。すべての人が必要な医科・歯科医療、介護・福祉サービスを受けられるよう、社会保障を抜本的に拡充すること。 |
(2) |
OECD平均に遜色のない医師数を確保するため、公的責任で医師数の養成を行い、医師不足の解消を図ること。看護師をはじめとした医療従事者の養成に公的責任を果たすこと。 |
(3) |
国の責任でインフラ整備と平時の感染症関連予算を大幅に増やし、流行時には緊急対応・臨時的な増強ができるようにすること。
@ |
保健所や地方衛生研究所の数・体制・予算を強化し、公衆衛生行政を確立すること。 |
A |
国立感染症研究所の機能強化を行うこと。日本版CDC(疾病予防管理センター)を創設し、感染症に対応できる仕組みを構築すること。 |
B |
救急医療体制やICU・HCU、感染症病床の運営補助制度を創設・拡充すること。 |
C |
一般病院・有床診療所や、介護・障害者施設等において感染対策が図れるよう、機械換気設備、遮断施設、消毒設備設置に対する補助金制度を創設すること。 |
|
(4) |
新型コロナウイルスに関する科学的な情報提供に努めること。ワクチン接種の有無による差別的な取り扱いや、新型コロナウイルス感染者・家族等に対する誹謗・中傷・差別・偏見の排除に努めること。 |
以上