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国保資格証明書の交付で受診率が激減

被保険者の受診率調査結果の概要(19都道府県)



資格証明書が滞納世帯の受診率を著しく抑制

 保団連は、資格証明書で受診した場合に医療機関から都道府県国保連合会に提出された届出数(2004年度分)を調査し、そのうち、届出数が把握できた19都道府県について資格証明書の交付を受けた被保険者の受診率を推計しました。

 その上で、推計した受診率を、国保中央会が発表した市町村国保「一般被保険者」の受診率(退職被保険者分や老人医療分に比べ、最も受診率が低い)と比較しました。

結果の概要

 その結果、資格証明書の交付を受けた被保険者の受診率(推計)は、一般被保険者の受診率に比べてさえ著しく低いことが判明しました。

 資格証明書交付世帯が最も多い神奈川県(34、174世帯)では、資格証明書を交付された被保険者の受診率(医科・歯科合計)は、一般被保険者受診率の30分の1程度(前年度は25分1程度)でした。神奈川県に次いで資格証明書交付数の多い福岡県(33,724世帯)では、100分の1程度(前年度とほぼ同じ)でした。

 交付世帯数が5番目に多い北海道(17,628世帯)では60分の1程度となっており、必要な療養がほとんど抑制されていると言えます。

 資格証明書で受診する場合は、「療養の給付」(現物給付)を受けられず、「療養費の支給」の扱いとなります。従って患者は、医療機関窓口で医療費の10割分を支払わなければならず、これが受診を抑制する主な要因と考えられます。

滞納対策の問題点

1)資格証明書の交付は収納率向上につながっていない

 資格証明書の交付は、国保保険料(税)の滞納対策として打ち出されましたが、資格証明書の義務的交付が開始された2001年度以降、滞納世帯は増加傾向にあり、資格証明書の交付が収納率向上に奏功していないことは明らかです。

 自治体担当者からは、「資格証を出された加入者は、国保制度や行政に対して不信を持ってしまい、かえって保険料を払わなくなる」との声も聞かれます。

2)年々引上げられる保険料(税)水準に滞納世帯増の原因がある

 国保加入世帯は、無職世帯主が5割を突破し、「所得なし」世帯が26.6%に達する等、低所得者層及び高齢者層が多いという構造的な問題を抱えています。

 国保法はその目的で「社会保障及び国民保健の向上に寄与する」と明記している通り、憲法第25条の規定をうけた公的な医療保険制度であるとともに、社会保険加入者・生活保護世帯等を除き強制加入の制度です。従って国保制度は、保険料負担に耐えられない層の存在をもともと前提にしており、保険料は低所得者でも払える程度の額であること、払えない者には軽減措置が所得の実態に即して適用されるべきものです。

 しかし、所得の減少にも関わらず保険料(税)は年々引上げられており、保険料率(所得に占める保険料(税)の割合)は2002年度は8.23%と、ついに8%を超えるに至っています。国保中央会によると、健保組合の保険料率は4.6%(2001年度)、政府管掌健保は6.7%であり、国保の保険料(税)水準は異常に高いのです。

 その結果、「払いたくても払いきれない保険料」の実態が広がっており、これを無視した資格証明書の交付は、滞納世帯から医療を奪う結果のみをもたらしていると言えます。

 国保法はその目的を踏まえ、「療養の給付」(現物給付)を本旨としています。従って、「滞納対策」と「国保加入者の療養を確保すること」とは別個の問題として扱い、滞納対策として資格証明書を交付する措置はただちにやめるべきです。 

保団連推計 国保中央会データ
資格証被交付者 受診率(推計) 一般被保険者(市町村国保)受診率
2004(平成16)年度 2003(平成15)年度
医科入院 医科入院外 歯科 合計 医科入院 医科入院外 歯科 合計
北海道 9.883 2.117 11.9998 注@ 26.011 586.059 107.958 720.028
岩手県 21.295 23.331 609.408 104.509 737.248
福島県 24.311 注A 22.127 565.691 102.677 690.495
埼玉県 7.21 2.06 9.27 注@ 14.676 517.438 124.094 656.208
東京都 15.749 4.349 20.098 14.186 573.984 141.857 730.027
神奈川県 18.452 4.581 23.033 注@ 14.746 554.912 130.569 700.227
石川県 0.752 11.729 2.406 14.887 25.903 594.279 103.65 723.832
福井県 0.311 11.677 1.418 13.406 24.223 577.734 97.777 699.734
愛知県 0.686 10.08 2.205 12.97 16.343 580.318 136.326 732.987
京都府 * * * 4.569 17.169 576.757 128.55 722.476
大阪府 14.628 注A 16.589 589.342 135.919 741.849
兵庫県 0.167 6.89 1.458 8.514 18.481 610.753 131.166 760.4
広島県 * 19.091 4.1 23.191 注@ 23.467 632.746 120.568 776.78
香川県 4.581 注A 28.53 619.463 112.643 760.636
高知県 0.987 25.014 3.983 29.984 27.87 598.118 111.199 737.187
福岡県 * 5.302 1.286 6.587 注@ 25.338 565.998 118.83 710.166
佐賀県 16.31 4.448 20.759 26.733 569.024 108.836 704.593
長崎県 0.754 18.695 2.277 21.726 29.515 597.117 116.526 743.158
鹿児島県 0.145 6.661 0.462 7.267 32.297 568.042 95.969 696.309

注@北海道、埼玉、神奈川、広島、福岡各県については、「医科入院」「医科入院外」の合計数のみ判明したので、合計数を「医科入院外」と見なして試算した。(「医科入院」数が混入しているが、少数と見なして無視した)

注A福島県、大阪府、香川県については調剤等を含む「総・合計件数」のみ判明したので、「総・合計件数」を「合計」(医科入院+医科入院外+歯科)と見なして試算をした。