膨張する医療費の要因は薬剤費にあり
−2000年度〜2016年度における概算医療費と薬剤費の推移−
2017年11月30日
2016年度の概算医療費は41.3兆円で、2002年度以来14年ぶりに対前年度比▲0.2兆円の減少となった。2000年度からの16年間で比較すると、総額で年間11.9兆円増加したことになる。膨張する医療費の要因はどこにあるのか。厚生労働省が公表している概算医療費データベース(メディアス)の制度別医療機関種類別医療費と社会医療診療行為別調査(e-stat)をもとに、2000年度から2015年度までの概算医療費の推移を薬剤費の動向を中心に分析した。
2000年度からの16年間で11.9兆円増加した概算医療費の内訳を施設別でみると、病院が5.5兆円、調剤薬局が4.7兆円増加し、伸びの大半を占めるが、調剤薬局は初めて対前年度比▲0.4兆円の減少となった。診療所の伸びは1.2兆円であり、歯科の伸びは0.3兆円にすぎない。
入院外医療費(病院、診療所の外来+調剤薬局)は7.4兆円増加している。中でも調剤薬局は2.8兆円から7.5兆円へと倍増している。調剤薬局の増加は主に薬剤費の増加によるものである。
入院外医療費の伸びの52%は薬剤費の3.8兆円であり、調剤薬局技術料等の0.9兆円と合わせると3分の2が薬剤関係によって占められる。
入院外医療費をレセプト1件当たりでみると、対2000年度比で診療所(▲14.6%)、歯科(▲18.5%)と大幅に減少している。一方、天井知らずの伸びを示していたがレセプト1件当たりの薬剤料は、対前年比▲5.3%の減少となり、2000年度比+52.8%の伸びとなった。
2016年度の入院の薬剤費は0.5兆円で包括医療の拡大により出来高部分が見かけ上減少している。入院外の薬剤費の内訳は外来3.0兆円、調剤薬局5.6兆円である。薬剤費全体で9.1兆円となり、対前年度比▲0.4兆円減少した。
薬事工業動態調査によれば、国内生産が横ばいなのに対して輸入の薬剤費の増加が目立つ。これら薬剤費高騰の背景には、日本の高薬価構造がある。
2016年度の概算医療費が対前年度比マイナスに転じたのは、高薬価の抗ウイルス薬等の薬価に引き下げによる薬剤費減少の影響が大きいが、経年的にみると過去最大の伸びとなった前々年度の1.5兆円増を相殺した結果にとどまっている。
本会は日本の高薬価構造が是正され、その財源が技術料引き上げや患者負担軽減に振り向けられ、国民医療の改善が図られることを強く求めるものである。
調査結果資料[PDF:6.69MB]
以上