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有床診アンケート結果について--保団連会員アンケート


全国保険医団体連合会では、2005年6月に、都道府県保険医協会・保険医会の協力を得て、有床診療所会員に対して有床診療所の現状と今後についてアンケートを実施しました。

このアンケートは、有床診療所の施設基準・人員基準等に関する審議が社会保障審議会医療部会で開始されており、来年の医療法改正において有床診の存亡にかかわる大きな変革が予想されることから、会員の意見を集約して、厚生労働省や社会保障審議会に要請することを目的に実施したものです。

アンケートは、北海道、山形、茨城、東京、富山、福井、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、島根、山口、香川、愛媛、福岡、佐賀、宮崎、長崎、熊本、鹿児島の21協会にご協力いただき、1089人から回答をいただきました。

アンケート結果PDF



1 有床診の現状について

(1) 主たる診療科

 内科(29.66%)、整形外科(14.78%)、産婦人科(14.23%)、外科(12.95%)の4診療科で全体の71.62%を占めました。

4科を含めた複数診療科標榜を加えると、90%前後となります。

(2) 入院基本料区分

@ 病床種別

療養病床のみの診療所(一般病床なし)が36診療所(3.31%)で、一般病床のみの診療所(療養病床なし)が556診療所(51.06%)であり、療養病床と一般病床の両方を有する診療所は、34.25%でした。

療養病床を有する診療所は、全体で409診療所(37.56%)ですが、このうち、介護のみの療養病床を有する診療所が63。介護と医療の両方の療養病床を有する診療所が103。医療のみの療養病床を有する診療所が243でした。

介護療養病床は、2005年10月から居住費と食費が介護保険給付から外されます。食費については月に4万2千円程度が新たに患者負担となります。居住費は、多床室(定員2人以上の部屋)で月に1万円程度、個室では月に5万円程度が患者負担となります。

医療の療養病床については2005年10月以後も保険給付の対象ですが、来年の国会に提出される医療保険法等改革法案の中で、保険給付の対象から外そうという動きがあります。

なお、病床区分に回答がなかった診療所が73ありました。また、兵庫と福井のアンケートでは、療養病床についての設問がないため、両県の回答者(51診療所)の病床種別は不明です。

A 一般病床の入院基本料区分

看護職員(看護師、准看護師)を10人以上配置しているJ群入院基本料1が248診療所(22.77%)、5人以上雇用しているJ群入院基本料2が431診療所(39.58%)でした。62.35%の診療所が5人以上の看護職員を雇用していることになります。

有床診療所における看護職員の人員配置規準が医療法にないために、社会保障審議会では有床診には規制がないとの議論が行われているようですが、実態はこのように診療報酬の規準をみたすために、病床数に比して多くの看護職員を雇用しています。

B 療養病床の入院基本料区分

療養病床入院基本料(対病床比率で、看護職員6対1+看護補助者6:1)を算定している診療所は329診療所あり、医療療養病床を有する診療所の96.76%に達しています。

(3) 全病床数

 10床以上の診療所が82%と大部分を占めています。

 厚生労働省が行った平成15年の全国調査では、10床以上の診療所が61.1%ですから、回答をいただいた診療所は、大型有床診が多いといえます。

(4) 医師数

 「院長と常勤医」「院長と常勤医2人以上」をあわせると、25.07%もあることは注目されます。おそらく、夫婦、親子ともに医師として勤務している有床診が多いのではないかと想像されます。現在の診療報酬では、第三者の医師を雇用することはかなり困難と思います。

(5) 当直

 当直なしが29.02%あります。医療法には抵触しませんが、医療の安全性確保の観点から万全の措置を講じておく必要があります。自宅から診療所までは5分以内が7割を超えていますので、多くの診療所で救急時の対応は可能と思われます。

2 有床診の在り方見直しに対する意見

(1) 医師数

「院長と協力登録医」「院長と非常勤医」「院長と常勤医」の意見があわせると、60%を占めていました。このことは、学会出席等やむを得ず診療所を留守にする場合を考慮したり、また患者国民の医療の安全要望に応えたものであると思います。保団連の小規模入院施設提案や全国有床診協議会の提言でも協力医を置くように提案しています。

なお協力登録医の在り方については、寝たきり老人在宅総合診療料の24時間連携体制加算のJ,K、Lをイメージすればわかりやすいと思います。

(2) 看護職員(看護師、准看護師)の数

@ 算定母数

現在のように許可病床数をもとにして定めるか、病院のように入院患者の実数から算定するかを聞きましたが、わかりにくかったためか、回答なしが3分の1以上ありました。

A 看護職員配置数

算定母数を許可病床数対比とする回答の中では、4:1が4割弱、5:1が2割弱、6:1が4割でした。算定母数を入院患者対比とする回答の中では、4:1が3割、5:1が3割弱、6:1が5割弱でした。

算定母数の両者を合わせた場合は、4:1配置が371診療所(34.07%)、5:1配置が167診療所(15.34%)、6:1配置が404診療所(37.10%)でした。

B 外来患者にたいする看護職員数

現状どおりで、基準を定める必要はないとする意見が678診療所(62.26%)ありました。なお最近の議論の中に、病院についても外来患者当たりの看護職員数の規制を撤廃しようとする意見があります。

(3) 地域医療計画の規準病床数との関係

 有床診の病床を規準病床数に加えるかどうかについて、「有床診を別枠でカウントする」という意見が578診療所(53.08%)、「病院と同じくカウントする」が132診療所(12.12%)。「カウントしない」が295診療所(27.09%)でした。