2章 高齢者の医療












 65歳以上75歳未満の前期高齢者は、国保や被用者保険(政管健保や健保組合)といった従来の制度に加入し、各保険者間で加入者数に応じた財政調整を行うことになります。国保加入の前期高齢者の保険料は、年金からの天引きとなります。
 75歳以上の後期高齢者は、独立した75歳以上の「後期高齢者医療制度」を創設し、市町村が運営主体となり、財政運営は2年単位とする計画です。厚労省の試算では、1人当たりの保険料は、年間72,000円(月額6,000円、低所得者は軽減措置)の見込みであり、介護保険料(06年度から月平均4,000円程度)とあわせて月額約1万円が年金からの天引きになります。
 窓口負担は、69歳までの前期高齢者は現行通り3割負担、70歳以上の前期高齢者は2割負担、後期高齢者は1割負担となります。「現役並み所得者」については、前期高齢者、後期高齢者ともに3割負担とする計画です。




 現役世代は介護保険と同じように、通常の医療保険料に上乗せして「高齢者のため」の「社会連帯的な保険料」を新たに負担させる計画です。また、大綱では、「後期高齢者医療制度」の財源は、すべての高齢者からの年金天引きで徴収する保険料が1割、医療保険の加入者数に応じた「現役世代の支援」が4割、公費を5割にする考えが示されています。高齢者の保険料総額の1割は、施行後5年をめどに、高齢者人口の増加などに応じて引き上げる一方、「現役世代の支援」の割合は低くなるようにすると言っています。
 この不況下に現役世代の負担を増やすことは、不況をいっそう深刻にするだけでなく、「高齢者のせいで負担が増える」と世代間の分断を助長することになりかねません。しかも、大企業の高齢者支援の負担はなくなるかもしれません。









 高齢者の世帯(65歳以上の高齢者のみ、またはこれに18歳未満の未婚の子が加わった世帯)の年間平均所得金額は、304万6千円(02年)です。しかし、最も分布が集中しているのは、100〜200万円の階層で約28%を占めています。生活保護基準が200万円ほどであることを考えると、高齢者世帯の約4割が生活保護基準を下回り、全体の約6割が平均値を下回っていることがわかります。
 つまり、一部の高所得者層によって平均が引き上げられており、統計上の平均値だけをみて一律に「高齢者は金持ちになった」とみるのは誤りであることがわかります。また、この統計は、高齢者人口の4割しか対象になっていません。扶養家族となっている高齢者などは含まれていません。