2章 高齢者の医療













 1人当たりの診療費について、老人は一般の5倍という統計が発表されています。この統計を根拠に「老人は一般の5倍も医療費がかかる」、だから「応分の負担をしてもらわなければならない」という意見があります。
 老人の1人当たり診療費とは老人医療適用年齢の全老人人口で割った1人当たりの平均医療費です。この統計は実際に受診した患者さん1人当たりの診療費の比較ではありません。人間だれでも、若いときはあまり病気にならないが、年をとると病気がちになり、治るまでの時間もかかるということを統計的に表しているだけです。1件当たりの診療費で比較してみると、ほとんど差がありません。外来では、一般の1.1倍であり、入院では0.9倍と反対に一般より低くなっています。問題視するのは、誤りということがわかります。













 「高齢者は、年間所得は少ないかもしれないが、昔から貯めた貯金があるだろう。その貯金で応分の負担をしてもらおう」という話もあります。高齢者世帯の貯蓄額をみると、高齢者世帯の約3割が200万円未満、約5割が700万円未満という実態です。
 過去1年の間に貯蓄の取り崩しを行った世帯は、5割に達しています。この間の推移をみると、50歳以降の高い年齢層で取り崩しが増えています。所得が少なく、家計を貯蓄に頼らないといけない高齢者世帯で、貯蓄の取り崩しが進んでいることがわかります。