2章 高齢者の医療










 高齢期の生活を支えている年金が、実際に受け取っている年金月額がどのようになっているのでしょうか。その特徴は、厚生年金の分布が大きくばらついているのに対し、国民年金は非常に低い水準となっていることです。しかもその過半数が、高齢者1人暮らし世帯の生活保護基準の9万円にも満たないレベル≠セということです。これでは、政府のいうような「わが国の年金制度は成熟してきた」といえる状態にないことはだれの目にも明らかです。




 日本の高齢者の就業状況をみると、男性の就業者の割合は、60歳から64歳で66.5%、65歳から69歳で51.6%となっており、女性の就業者の割合は、60歳から64歳で41.5%、65歳から69歳で28.7%となっています。
 就業されていない高齢者の就業希望の有無をみると、男性の場合、60歳から64歳の就業されていない高齢者(33.5%)のうち5割以上が、65歳から69歳の就業されていない高齢者(48.4%)のうち約4割の方が、それぞの就業を希望されています。女性の場合、60歳から64歳の就業されていない高齢者(58.5%)のうち3割以上が、65歳から69歳の就業されていない高齢者(71.3%)のうち2割以上が、それぞれ就業を希望されています。就業を希望する理由として、「健康を維持したいから」が最も多いですが、「収入を得たいから」(男性30.5%、女性37.9%)がこれに次いでいます。(「厚生労働省「高年齢者就業実態調査」、内閣府「高齢社会白書」(H15年度版))5割を超える高齢者が老後の蓄えを足らない(内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」平成14年)と回答しています。健康な生活を維持したいとの意向とともに、経済的理由で就業希望者が多くなっていることがうかがえます。









 日本の国民医療費の財源は、公的負担(国と地方の税金)と保険料(事業主負担と被保険者負担)、患者負担で構成されています。国民医療費の負担構成の推移を、1980年からみてみましょう。これからわかることは、国の国庫支出が20年間で、30%から25%に引き下げられたことです。2003年の医療費における5%は、金額として約1兆6千億円にあたります。いっぽう、家計からの支出は、40%から45%に引き上げられ、2004年には約50%と推計されています。また、地方自治体の負担は、3%増え、事業主の負担は、3%減少しています。このことから、国と事業主の支出分を減らし、代わりに家計と自治体に負担させたことがわかります。