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医療事故調査制度のポイントC
―調査・支援センターが行う調査―

(全国保険医新聞2015年10月15日号より)

 

 医療事故調査制度が10月1日から実施された。法令や通知をもとにポイントを解説する。今回は、医療事故調査・支援センター(以下、センター)が行う調査について。
7/5号ポイント@7/15号ポイントA9/25号ポイントB

 医療機関で発生した「医療事故」は、当該医療機関において院内事故調査を実施することが医療事故調査制度の基本であるが、「医療事故」が発生した医療機関の管理者または遺族は、センターに調査を依頼することができる。
 遺族から調査を依頼できるのは、管理者が「医療事故」としてセンターに報告した事案に限られる。それ以外の事案が、遺族からの依頼だけでセンターの調査対象となることはない。

院内事故調査を検証

 センターとして指定されている日本医療安全調査機構は、調査に要する経費負担は、医療機関が依頼する場合は10万円、遺族が依頼する場合は2万円としている。
 管理者または遺族の依頼を受けたセンターは、必要な調査を行う。センターの調査は、院内事故調査が行われたことを前提に、その検証を行うとが中心。院内事故調査とは別に、センターが新たな調査を独自に行うことは想定されていない。
 センターが調査を終了した場合、管理者と遺族に報告書が交付される。遺族にも報告書が必ず交付される点で、院内事故調査の報告の場合と異なる。もっとも事故調査の目的が個人の責任追及ではないことから、センターの報告書や調査のための内部資料は、法的義務のない外部からの開示請求には応じないこととされている。

医療事故調査制度の概要

医療事故調査制度の概要

■遺族への説明は管理者が適切な方法を判断

 医療機関は遺族に、センターに報告する内容を説明する。説明の方法は、(ア)「口頭(説明内容をカルテに記載)」、(イ)「書面(報告書または説明用の資料)」、(ウ)「口頭・書面の双方」のいずれか適切な方法による。必ずしもセンターに報告する報告書そのものの交付である必要はない。いずれの方法によるかは管理者が判断するが、通知では「遺族が希望する方法で説明するよう努めなければならない」とされている。

■匿名化だけでなく非識別化も必要

 センターへの報告は書面またはウェブシステムで行う。報告事項・報告方法は省令・通知で定められている。報告書冒頭には「個人の責任を追及するためのものではない」旨記載する。従事者等の関係者は匿名とするだけでなく、他の情報との照合によっても識別できないように加工(非識別化)する必要がある。従事者や遺族から報告書の内容に意見があるときは、その旨を記載する。再発防止策については、報告書の記載事項とはされていない。
 管理者から報告を受けたセンターは、他の個別事項と併せて事例を集積、分析して(図のC)、一般化・普遍化した結果を管理者に報告する。

以上