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【支払基金改革を考えるA】医師の裁量否定しかねない

全国保険医新聞2018年5月5・15日号より)

 

 

 医療機関に診療報酬を支払う支払基金の「改革」に向けた議論が進んでいる。全国社会保険診療報酬支払基金労働組合(全基労)中央執行委員長の平岡信彦氏(写真)に医療への影響などを連載で解説してもらう。(6回連載。第1回「国民の医療保障に関わる」)。

 

 前回、支払基金「改革」の2つの「計画書」が出された背景に規制改革会議での議論と日本再興戦略に示された医療・保険分野での市場拡大方針があることを指摘しました。この中で支払基金「改革」について直接触れたのが、規制改革会議での議論でした。
 今回は規制改革会議での議論の特徴と、そこで出されたICTを使った審査の拡大が「計画書」にどのように反映されたのか、医療現場への影響などについて考えてみたいと思います。

 

ICTを使った審査と支払基金の合理化

 規制改革会議の支払基金「批判」は、大きく分けると、@ICTを使った審査の拡大と支払基金の合理化を求める意見、A支払基金の事務費を査定の対価とすべきとする意見、の2つでした。
 @については、コンピュータ機能を使った審査をもっと行うべきだとする意見と全国各都道府県にある支払基金支部を集約すべきとする支払基金の合理化論についての意見があります。前者については、「電子レセプトにした以上それなりにAIなり何なりの技術を使って相当前捌きをしっかりやって人間が見なければいけないものを減らしますという業務の流れを…」等が代表的な意見でした。

 

コンピュータチェック9割の審査に

 規制改革会議の「コンピュータ機能を使った審査をもっと行うべき」とする意見に応じ、支払基金は「効率化計画」で、審査におけるICTの活用の根本見直しを掲げました。「これまでのコンピュータチェックは、あくまで審査委員の審査の前捌きとして行われてきたが、この考え方を180度転換する」との考えを示し、2022年度までにコンピュータチェックで9割、支払基金が雇用する医師・看護師等の医療専門職等を中心とした職員による対応で1割、残る重点審査分に限って審査委員の医学的知見を基に対応することを目指す目標を据えました。
 コンピュータチェックをどのように拡大し、目標に近づけていくのか、このことが大きな課題となっています。3月1日に厚労省と支払基金は、「審査支払機関改革における支払基金での今後の取組」(「今後の取組」)を策定しましたが、あらためて、22年度までにレセプト全体の9割程度をコンピュータによるチェックのみで完結することを目指すとし、18年度の取組事項として、「過去の審査データを分析し、審査結果が一定の幅の範囲内に収まるもの等については、専門的知見も踏まえながら、コンピュータチェックルールを設定していく」とコンピュータチェック拡大の基本方針を示しました。

 

簡単には進まない

 コンピュータチェックルールを拡大してコンピュータチェックのみで完結するレセプトを増やすことは、医師の裁量権を否定し、保険で十分な医療を提供できないことにつながりかねない重大な問題です。
 しかし、「今後の取組」で「審査結果が一定の幅に収まるもの等については、専門的知見も踏まえながら」としていることは注目に値します。「一定の幅」がどの程度のものが対象になるのか、これからの検討課題だと思いますが、コンピュータチェックで完結するレセプトを増やすことが、そう簡単でないことが伺えます。

以上