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審査支払機関改革などは撤回を
医療保険関連法案 審議3日で衆院通過

全国保険医新聞2019年4月25日号より)

 

 マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入や審査支払機関改革などを含む医療保険関連法案が、16日に衆院を通過した。健康保険法、社会保険診療報酬支払基金法など16本の法律を一括で改定し、医療や診療のあり方に大きな影響を与える内容だが、衆院厚労委員会での審議は実質3日間のみだった。全国保険医団体連合会(保団連)は審査支払機関改革などの撤回と徹底審議を求める談話を発表している(4/11付「【談話】健康保険法等改正法案は、慎重かつ徹底した審議を」)。

 

 法案には、マイナンバーカードによるオンライン資格確認の導入、審査支払機関改革、医療と介護のデータの連結、利用などが盛り込まれている(表)。審査の「効率化」や医療データ利活用により医療・介護費用の地域差を低い水準へとならし、医療費抑制を図る狙いがある。

医療保険関連法案の概要
マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認の導入等
オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための「医療情報化支援基金」の創設
審査支払機関の機能の強化
 ・データ分析業務の追加
 ・支部長の権限を本部に集約
 ・レセプト事務点検を全国10カ所程度に集約
 ・手数料の階層化
医療保険等と介護保険のレセプトなどの連結解析等
高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等
被扶養者の要件の見直し( 国内居住を原則に)
医療保険関連法案の概要
※1月17日社会保障審議会医療保険部会資料より作成

 

番号カード持ち込みは危険 オンライン資格確認

 患者の受診時などに保険証の資格の有無をリアルタイムで確認できるオンライン資格確認を、マイナンバーカードでできるようにする。消費税10%に伴う増収分を用いて「医療情報化支援基金」を創設し、医療機関でのシステム導入経費を補助する。
 医療機関にマイナンバーカードが持ち込まれることで、院内でのカード紛失や番号漏洩が生じる危険がある。医療機関がどのように対応するかが問題だが、厚労省は「対応策を整理して周知する」と述べるにとどまっている。
 保険証でもオンライン資格確認が可能となるのにマイナンバーカードによる資格確認をあえて盛り込むのは、情報漏洩や番号の悪用のリスクなど問題の多いマイナンバーカードの普及に、医療を利用するものだ。

 

機械的審査の拡大や査定増も 審査支払機関改革

 審査支払機関の「機能の強化」を目的に、業務と機構を再編する。
 審査支払機関の業務に、レセプトや特定健診の情報収集やデータ分析等を追加する。審査に基づく迅速・適正な支払いを通じて国民皆保険を支える審査支払機関の役割を、医療費抑制を主眼としたビッグデータ活用の推進役に変貌させることとなる。
 また、ICTを活用して業務運営を「効率化」する。計画ではレセプトの9割をコンピューター審査で完結させることを目指している。現在47都道府県に置かれている支部を再編し、職員によるレセプト事務点検の業務は、当面全国10カ所程度の審査事務センターに集約する。患者の個別性や地域の特性が考慮されない機械的審査の拡大が懸念される。
 支払基金の財政基盤である保険者からの審査手数料は、現行のレセプト枚数の基準に加えて、審査内容も勘案して設定する。医療費増加を避けたい保険者の意向に応じて、査定が強められる恐れがある。

 

情報漏洩リスクや負担増 レセプト情報提供の解禁ほか

 その他、国が保有する医療と介護のレセプトを連結し、民間事業者への情報提供を解禁する。情報漏洩リスクの増大などが懸念される。
 また、高齢者に対する保健事業と介護予防事業を、市町村が一体的に実施することとする。必要な専門職確保の財源は後期高齢者の医療保険料などで賄うとされており、負担増となる。
 さらに、健康保険が適用される被扶養者を、日本に住所を持つ者に限定する。保険料が同じでも給付に差がつき、外国人差別との声もある。
 保団連の住江憲勇会長は4月11日に発表した談話で、法案の徹底した審議、マイナンバーカードによるオンライン資格確認と審査支払機関改革法案の撤回を求めた。参院での審議に向けて、引き続き要請を強めていく。

以上