医療経済実態調査
医院経営上向かず 病院は赤字続く
(全国保険医新聞2019年12月5日号より)
2020年診療報酬改定率の決定に向けた議論が本格化している。11月13日に中医協(調査実施小委員会)で示された「第22回医療経済実態調査」の結果報告を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は医療機関全体で経営状況は変わらずとして、診療報酬の抜本的プラス改定を強く求める談話を発表した。
調査結果では、損益比率(損益差額が医療・介護収益に占める割合)について、一般病院は「過去3番目の赤字幅」となった2016年度より若干改善されたものの、依然赤字基調が続く。医科診療所(無床)も損益比率は横ばい・低下し、医療法人(無床)では、赤字(損益率0%未満)が3分の1を超えている。歯科診療所の8割を占める個人立の損益比率は微増だが、依然、医療現場の実態に近い最頻値と平均値の乖離が大きく、歯科医院間での格差が見られる。
日医「前回上回る本体プラスを」
地域医療の疲弊が進む中、財務省は20年度予算に関する「建議」では、本体マイナスを含め「2%半ば以上のマイナス改定が必要」との姿勢を崩さない。
日本医師会の横倉義武会長は、本体改定率について「前回を大幅に上回り、さらに働き方改革が実現できるような改定率」を確保するよう求めている。政府が産業界に賃上げを求める中、「本体マイナスは医療関係者300万人の給料を下げることに等しい」と強調する。日本病院団体協議会では「入院基本料の増額」を求める緊急要望を公表している。
政府は「骨太の方針」に沿って、医療・社会保障費の伸びの抑制に向けて、本体と薬価を合わせたネットでマイナスにした上で、本体改定率の伸びも抑える意向だ。
実態調査結果を見ても、病院では赤字基調が続いている。医科・歯科診療所とも経営の改善が見られず、依然として医療・歯科医療従事者の給与水準は低い状況に留まっている。かかりつけ医・在宅医療の拡充や医師等の偏在の是正、さらには喫緊となっている働き方改革の推進に向けて、基本診療料、基礎的技術料の引き上げを中心としてネットでの抜本的なプラス改定が求められる。
以上