医療提供を弱体化 医療法 衆院採決に抗議
(全国保険医新聞2021年4月25日号)
医療法改正案が4月12日に衆院本会議を通過した。保団連は、拙速な審議に抗議し、参院での徹底審議を求めた。
コロナ危機を通じて、平時から余力を伴った医療提供体制の確保、充実・強化が求められている。にもかかわらず、法案では、医学部定員数を削減する政府方針を前提に、医師以外の職種への負担シフト、受診行動の変容・抑制や病床・病院の整理・削減を進めるなど、逆に医療提供体制の縮小・弱体化を進めている。特に、消費税財源(全額国庫負担)を使い病床削減を進めていくことを法制化することは本末転倒である。
医療計画に新興感染症等の感染拡大時での医療確保を位置付けるとしているが、コロナ患者受け入れに大きな役割を果たしてきた公立・公的病院に対して再編統合を求める436病院リストは撤回すらされていない。感染症の蔓延時に備えた医療従事者の育成・確保はじめ、施設の整備・改修、医療資材・機器等の供給・備蓄や医療機関の経営補償などにおける国の責任・支援は不明瞭であり、都道府県や医療現場に医療確保に係る対応・責任が押し付けられかねない。
政府が強調する医師の働き方改革についても、2024年度の本格開始に向けて、地域での医師の確保に向けた施策、研修医等の労働時間短縮や大学院生等の「無給医」問題の解消に向けた具体的施策など議論はほとんど深められていない。かえって、過労死ライン(時間外労働年960時間)以上を認める労使協定が大幅に増えている実態が指摘されるなど、年1,860時間の時間外労働を追認する転倒した事態になることさえ危惧される。
保団連は医療法改正案については、参議院では徹底的に審議した上、抜本的な修正を図るよう強く求めた(4/12「【声明】医療法改正案の衆議院本会議での採決に抗議する」)。
以上