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20年度学校健診後治療調査詳報・上 
未受診で深刻な健康悪化

全国保険医新聞2021年6月25日号

 

 保団連が実施した2020年度学校健診後治療調査の結果を2回に分けて報告する。今回は、歯科、眼科、耳鼻科の未受診率と報告された事例を紹介する。(内科、未受診の理由、保団連の提言は7月5日号で紹介予定)

歯科―口腔内の格差が顕著に 歯科健診欠席する子も

 歯科健診を受けた子どもの31.1%(前回は32.0%)が要受診と診断され、そのうち62.3%(前回は57.0%)が「未受診」だった(図1)。
 未受診率が前回を上回ったのは、新型コロナウイルスの「感染の恐れ」を理由にした受診控えが原因と考えられる。養護教員からは「コロナが落ち着くまで保護者が健診後の受診を控えている」との指摘がある。一方、養護教員自身もコロナ禍の中、歯科受診を強く勧められていないという現状も報告された。一斉休校などで学校健診の時期が遅れ、受診までの報告期間が短かったことも受診率が上がらなかった一因とする声もある。「新型コロナウイルス感染症拡大により、給食後の歯磨きの実施や歯科指導の染め出しができず、来年度以降のう歯の増加が心配」(岐阜・小学校)など、歯磨きが学校で行えなくなったとの報告も多く寄せられた。

 

口腔崩壊の子「いた」が3割

 口腔崩壊(むし歯が10本以上、歯の根っこしかない未処置歯があるなど咀嚼が困難な状態)の子どもの有無については、「いた」と回答した学校が、29.8%となり、前回調査(28.9%)とほぼ同様の結果となった(図2)。口腔崩壊に陥っている子どもは3,839人(約0.3%)との結果となった。むし歯のある子どもの数は、歯磨き習慣やフッ素塗布などにより近年減少しているが、極端にむし歯が多く、口腔内が放置されている子どもは存在している。
 事例では、「歯周炎がひどく、歯茎から出血している。母子家庭と経済的貧困、子への無関心のため受診できずに、保健室に『痛い』と訴えてくる」(千葉・小学校)、「(むし歯が)10本以上ある児童のほとんどが、受診していない。(1回も受診したことがない)」(大阪・小学校)「多数虫歯を保持している生徒や、毎年歯科健診の日に欠席し、その後の受診にもいかない生徒がいる」(秋田・中学校)など、歯科健診日に欠席する児童・生徒の健康状況は把握できないとの報告もあり、実際の健康状況が危惧される。

 

眼科―ゲーム、SNSの時間増え視力低下の原因に

 眼科健診(視力検査をのぞく)で要受診と診断されたにもかかわらず、未受診であった子どもは55.4%(前回47.6%)(図3)、視力検査の場合は、58.3%(前回56.3%)となった(図4)。
 眼科への受診が遅れた結果、「眼疾患を治療しなかったために、症状が悪化した」(愛媛・小学校)、「受診を勧めるが保護者はコロナ感染が不安で病院につれていけない。その後医師と学校のすすめで4カ月後に受診し、ヘルペスと診断された」(茨城・中学校)「視力がずっと(D・D)だったのにそのまま放置して数年たってしまったが、進路が関わっているため、ようやく受診し、両眼、網膜剥離が判明。手術治療を受けた」(千葉・高校)など、痛ましい事例も報告された。

 

経済的理由で眼鏡購入困難な家庭も

 コロナ禍で外出自粛が求められる中、ゲームやスマホ、SNSに費やす時間の増加による子どもたちの視力低下が指摘された。「長期休校の影響か、視力低下した児童が多くいた。28人中19人が要受診という学級があり座席配列に困った」(愛知・小学校)、「視力Dの生徒が前年度の5倍という結果が出た。休校になり、自宅で過ごす時間も増えたが、テレビやゲームの時間が長くなり、近くのものばかりを見ている生活も一因ではないかと考える」(宮城・小学校)などの声が寄せられた。
 また、眼鏡を購入する上で経済的な負担が障壁となっている事例も寄せられている。「眼鏡は医療費助成の対象外のため、受診して眼鏡処方されても作らない(作れない)家庭がある」(東京・小学校)、「眼鏡を更新したいが(保護者の仕事が変わり)収入が減ったので買いにいけないと保護者から言われた」(京都・中学校)などである。

耳鼻科―学習・生活への支障や補聴器買えない事例も

 耳鼻科健診(聴力検査を除く)を受けて要受診と診断されたにもかかわらず、未受診だった子どもの割合は、57.4%(前回50.8%)(図5)、聴力検査は41.2%(前回35.0%)(図6)となっている。
 養護教員からは、「鼻炎、中耳炎、耳垢でもなかなか受診せず、勉強に集中できない場面があった」(千葉・小学校)、「鼻炎を放置して鼻づまりによる頭痛を訴えて来室する」(佐賀・小学校)など、学校での学習・生活面において、支障をきたしている報告が寄せられた。
 また聴力低下の対応が必要な子どもについて、「補聴器を購入できない」(三重・小学校)「難聴のため補聴器をつけているが、壊れていたり、新しいものが必要でも購入の手続きがしてもらえない」(京都・中学校)との事例も寄せられ、「聴こえない」子どもたちへの対応が必要な状況が明らかとなっている。
 「扁桃肥大で主治医から手術を勧められているが、保護者は不要と判断している。コロナ感染の心配もあり、本年度の受診を見送ったとの連絡があった」(岩手・中学校)など、新型コロナ感染への不安を理由とする未受診の報告が寄せられた。

 

医療者と学校の連携で受診に成功

 養護教員は、受診を促すために再度の受診の勧めや保健指導を行っている。「何度も受診を勧めたが、必要性を感じていただけなかった」(長野・中学校)との声がある一方、「受診の勧めに応じず、耳鼻科医との連携で、養護教員同伴で受診した」(宮城・小学校)と医療関係者と学校の連携で受診に成功した事例の報告もあった。

以上

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