昨秋台風19号で激甚災害を被った宮城県丸森町、町中心部の大規模浸水や山間部集落の土砂崩落の背景には、風光明媚な阿武隈山系と阿武隈川支流に地域特有の脆弱性があった。第3回は、毎年襲来する台風に対する町と病院の想定防災・減災の考えを解説してもらう。(毎月5日号で全5回掲載予定。第2回、第1回)
大規模浸水で2日間孤立した町中心部、土砂崩落と道路寸断の多発で孤立した山間部集落、そして約20センチの床上浸水で安全な医療が提供できなかった機能不全の病院――
内水氾濫という弱点 なぜ町が広範囲に浸水したのか。町中心部は北側を阿武隈川、南側を阿武隈川支流の新川と内川に囲まれ、西側には山がそびえる盆地状の市街地です。現地を調査した東北大学災害科学国際研究所は、大規模浸水は阿武隈川の氾濫ではなく、山に降った雨水が市街地に集まり、排水されずにあふれる「内水氾濫」が主要因であると分析しました(図)。
私は、2015年関東東北豪雨や1986年「8.5豪雨」を経験した町の患者さんから、この場所は「扇状の湿地帯」なので昔から危険なのだと聞いています。水害の広域拡大は人災だと言う住民にも会いました。私たちの「避難行動の道しるべ」となる町のハザードマップは決して万能ではないものの、しっかりと確認しておく必要があります。
堤防、道路素材、山火事も影響 阿武隈川支流の内川と新川、五福谷川で多発した堤防の決壊は、被害拡大の連鎖となりました。通常、川から水があふれるのですが、今回は逆であったという指摘は、堤防の造り方にも対策が必要であることを示しました。
また、人命が奪われた場所や土砂崩壊の多発地帯は、かつて約160ヘクタールを焼いた2002年3月の山火事発災エリアとほぼ一致していました。県と町は03〜07年、山火事が及んだほぼ全域にスギやナラを植え森林再生に取り組んできましたが、植林されたスギはまだ樹齢が若くて岩盤まで根が入らず、土砂崩れが起きやすくなっていたのです。 以上 |
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