20年度学校健診後治療調査詳報・下
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内科―未受診率が上昇 肥満、不登校が増加 |
内科健診を受けた児童・生徒のうち要受診と診断されたにもかかわらず、未受診だった子どもの割合は、53.6%(前回50.5%)となり、未受診率は上昇した(図1)。
内科関連の具体的困難事例は、773事例寄せられた。その中で、一番多かったのは「肥満児童・生徒の増加」で、「不登校の増加」、「心の問題」、「アトピー性皮膚炎疑い」と続く。
新型コロナ感染拡大防止のための一斉休校中に、肥満の子どもが増加したとの報告が多数寄せられ、同時に「肥満についての保護者の認識が低い」(茨城・小学校)との声も多い。一方で、「養育放棄の要素の強い低栄養の子がいる」(宮城・小学校)など、満足に食べることができていない状況も報告された。「摂食障害・神経性食欲不振症」(山梨・中学校)との報告もあり、体重が減少している子どもがいるとの声も寄せられた。
不登校で健診受けない事例も
「不登校が増え、健診自体を受けていない生徒が増加。その生徒たちに肥満や生活習慣病が増えている」(大阪・中学校)との回答もあり、学校健診を受けない児童・生徒が増加し、健康状況が把握できていない可能性もある。
アトピー性皮膚炎については、「アトピー性皮膚炎の疑いがある生徒が体育後(特にバレーボール)に手のひらの出血で来室することが多い。何度も受診を促すが受診につながらない。この生徒は歯科健診でも要受診とされているが未受診」(石川・高校)と、複数科が未受診のケースも指摘された。
心電図異常についても、「心臓健診にて要精密検査となり、学校は速やかな受診を促しているが(保護者が)応じない」(栃木・小学校)など、心配の声が寄せられている。
未受診の理由―理解不足とともに経済的困難も |
全科を通じた未受診の理由についての養護教諭の回答では、一番多かったのは前回調査と同様に「健康への理解不足」だったが、今回はその次に「新型コロナ感染による受診控え」が多く、「共働き」、「無関心」、「ひとり親家庭」「経済的困難」と続いた(図2)。
未受診の児童・生徒は、家庭環境に何らかの問題を抱えていることが窺えるが、今回の調査では、新型コロナウイルスの感染拡大という要素が加わったことで、子どもが必要な受診をできない事例が増えている。さらに、「経済的困難」が20.9%と少なくない割合を占めており、医療費負担の軽減も未受診をなくす上では必要と考えられる。
保護者が「軽症」判断し未受診も
未受診についての自由記載欄では「兄弟が多く世話ができない」(北海道・小学校)、「へき地のため近くに病院がなく、車で1時間以上かかるためハードルが高い」(奈良県・中学校)、「健診終了時期が遅い。外出自粛令の影響が大きく、治療の推進も届かない」(栃木・小学校)、「受診しているが学校への申告のし忘れがある」(山梨・小学校)などの報告があり、未受診の要因は多岐にわたっている。
また、「アレルギー結膜炎などは毎年のことだから症状もきつくないので受診するほどのことでもないという考えの方もいる」(京都・中学校)との意見のように、症状が軽いという保護者の判断で未受診となっている事例も多いことがわかった。
保団連の提言 |
保団連が今回の学校健診後治療調査を踏まえて出した提言の概要は次の通り。
(1) |
未受診を「自己責任」とせず、受診しやすい環境を整える。
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(2) |
眼鏡・補聴器購入への補助制度拡充、必要な歯科矯正の保険適用。
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(3) |
学校における健康教育の充実及び保護者への理解の周知。
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(4) |
次の点について一層の研究及び対策を講じる。
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(5) |
新型コロナウイルス感染症による子どもたちの心身への影響の把握と対策の一層の推進を図る。 |
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(6) |
国や自治体が、学校健診後の未受診の現状についてすみやかに全国調査を行う。 |
以上