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※全国保険医団体連合会では、6月7日に下記の要望書を安倍総理、塩崎厚生労働大臣、麻生財務大臣及び河野防災担当大臣宛に送付いたしました(PDF版はこちら)。


平成28年熊本地震被災者への医療・介護などの
確保に関する緊急要望書(その4)

2016年6月7日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 平成28年(2016年)熊本地震の甚大な被害からの復旧などに対する貴職のご尽力に、敬意を表します。
 しかし、震災発生(2016年4月14日、16日)から2カ月近く経った今も、被害からの復旧・復興は進んでおらず、被災された方々の生命と健康を守るための取り組みや、被災地域の医療体制等の早急な復旧・復興の取り組みは全く不十分です。
 当会は、医師、歯科医師10万5千人の団体として、4月19日(その1)28日(その2)5月19日(その3)にも表記内容につきまして緊急要望をしましたが、その後の状況も踏まえて、改めて要望書を提出いたします。
 財源措置を含め、下記事項実現に向けた早急な対応をお願いいたします。

1.

被災者の医療費一部負担金・保険料免除について

(1)

医療保険の種別を問わず、被災者の医療費一部負担金・保険料免除を国の負担で実施してください。

(2)

7月末としている免除対象期間を早急に延長してください。

(3)

免除対象の「主たる生計維持者が重篤な傷病を負った場合」については、少なくとも東日本大震災時で対象とした「罹災により1ヶ月以上の治療が必要な状態」を含むことを早急に明示してください。

(4)

医療費一部負担だけでなく、入院時食事療養費及び入院時生活療養費の標準負担額についても免除としてください。

(5)

被災地では相次ぐ余震に対する不安等から、全半壊等に至らなくても車中泊やテント暮らしの人も少なくありません。こうしたことから、一部損壊等も免除対象としてください。

(6)

熊本県内の市町村国保の被保険者については、当面資格証明書の交付を止め、正規の被保険者証を交付してください。

(7)

免除等の取り扱いは厚生労働省ホームページに掲載されていますが、被災地では未だ十分な周知が行われておりません。早急に下記の対応を行ってください。

@

被災地においては、説明文書の張り出し・配布や、拡声器、マスコミ等で広報するとともに、特に県外医療機関においても同様に免除等が取り扱われることについて十分周知するなど、あらゆる手段を通じて遺漏のないようにしてください。

A

政府等の広報が遅れたために、免除対象者でありながら医療機関等の窓口で一部負担金を払っている例もあります。償還払いの手続きを簡素化し周知してください。

2.

被災者の介護保険の保険料および利用料、障害福祉サービスの利用料負担の免除および減免措置についても上記1と同様にしてください。なお、食費・居住費の自己負担分についても免除対象としてください。

3.

被災地域の医療保険者、介護保険者等に対する特別な財政援助措置を講じてください。

4.

地域住民の生命と健康を守る立場から、公的・民間問わず全ての被災医療機関、被災介護事業所、被災福祉施設の復旧支援に向け、補助金制度の拡充及び無利子融資制度の創設を行ってください。

(1)

医療施設等災害復旧費補助金の対象となる医療機関等が、補助金の申請ができていないケースも見受けられます。補助金の対象となる医療機関等が漏れなく申請できるよう、改めて申請を受け付けてください。なお、申請方法を簡素化し、補助金対象となる被災医療機関等に対する十分なサポートを行ってください。

(2)

医療施設等災害復旧費補助金を拡大し、全ての民間の医科・歯科医療機関を対象にしてください。

(3)

現在対象外となっている「協議額が80万円未満の場合」、「医科で50万円以下・歯科で10万円以下の医療機器」等についても、補助対象としてください。また、補助率を引き上げてください。

(4)

社会福祉施設等災害復旧費の国庫補助の対象を拡大し、全ての介護・福祉施設等を対象としてください。補助金を増額してください。

(5)

公的、民間問わず被災した医療機関および介護施設・福祉施設の復旧・再建にむけ、福祉医療機構の医療貸付事業・福祉貸付事業について、無利子かつ長期の返済猶予の融資制度とし、ただちに実施してください。また、既利用者が災害復旧のため新たに機構からの融資を希望する場合は、従来の債務を免除してください。

(6)

被災した入院・入所施設から他の入院・入所施設に患者を移送させた後に、当該施設が復旧したため、患者・利用者を再度移送させた場合の費用については、患者・利用者や施設負担とならないよう必要な手立てを取ってください。

(7)

被災医療機関、被災介護事業所、被災福祉施設が医療・介護を継続できるよう、医療機器、介護機器などの負債について、減免措置を講じて下さい。

5.

上下水道など、ライフラインの復旧に全力を挙げてください。

6.

避難所において新たな病気を発生させないために、医療機関に準じての感染対策―うがい、手洗いの励行などの対策―を講じてください。そのために、うがい薬、手洗い用薬、マスクなどを常備してください。避難所に必要な数の仮設トイレを設置し、被災者に十分な量の栄養のある食事を提供してください。またプライバシーの確保、福祉避難所整備など障害者対策の確保を行ってください。

7.

車中泊避難者やテント泊避難者の実態把握と緊急対応を実施してください。

8.

仮設住宅、借り上げ住宅、復興住宅の整備に全力をあげてください。

9.

被災者に対する各種ワクチン接種は、無料で実施できるようにしてください。また「心のケア」など長期的な見通しにたった継続的な医療支援を行ってください。高齢者、病弱者などが適切な医療・療養が確保できるよう、被災地以外での場所の確保を含む、受け入れ体制について行政が責任を持って行ってください。

10.

被災自治体では、罹災証明の発行をはじめとした復旧に係わる業務だけでなく、通常の業務についても人出も資金も足りない状況があります。国として、人的支援、経済的支援を早急に強めてください。また、罹災証明の発行にあたっては、当該建造物の機能が果たせるかどうかを判定基準としてください。

11.

被災者生活再建支援制度について、下記の改善を行ってください。

(1)

支援金を500万円に引き上げるとともに、給付対象を半壊までに拡大してください。

(2)

生活基盤に著しい被害を受けたものの生活再建を支援するため、給付対象を住宅だけでなく個人事業所や農地など、生業再建全般に拡大してください。


12.

今後も日本全国どこでも巨大地震が発生する恐れがあります。医療施設耐震整備事業の補助対象を全ての民間の医科・歯科医療機関に拡大してください。

13.

がれきの撤去対策を進め、撤去費用の公的負担、撤去の公的援助を早急に進めること。

以上