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※新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえて、全国保険医団体連合会では1月29日2月6日2月20日に続き、下記の要望書を総理、厚生労働大臣に送付しました(PDF版はこちら[PDF:397KB])。

【要望書】新型コロナウイルス等感染症対策の
抜本的強化を求める緊急要請(その4)

2020年2月27日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 前略 国民の医療と健康確保に対する貴台のご尽力に敬意を表します。
 2月25日に政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は、「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定しました。
 基本方針において、情報公開の徹底や、医師が必要と認めるPCR検査の実施、ワクチンや迅速診断用簡易検査キット開発、マスクなどの増産・確保など、保団連が要請してきた内容が一定反映されたことは評価しますが、基本方針を徹底するには153億円の補正予算ではまったく不十分であり、具体的な対策も不透明です。
 また、感染症の拡大を防ぐためには、何よりも受診抑制をなくすことが重要です。1970年代後半から年1,000人を下回っていた季節性インフルエンザによる年間死亡者数は、2010年以後、右肩上がりで増え続け、2018年には3,325人、2019年はデータが公表されている9月までで3,000人を超えています。この背景には、様々な要因が想定されますが、その一つには、非正規労働者の増加や労働強化、賃下げ、年金の引き下げによる生活困難、保険料や医療費窓口負担の引き上げ、国保資格証明書を含めた保険証未交付の方の存在なども想定されます。
 さらに、感染患者が増加した場合は、一般の医療機関でも感染の疑いのある患者を受け入れることも盛り込まれましたが、一般の医療機関には重症化しやすい持病のある患者さんも受診しており、感染の疑いのある患者を受け入れるためには十分な時間的・空間的な隔離が不可欠です。しかし、これに対する財政的支援策は全く欠落しています。
 なお、日常診療の確保が大変重要ですが、医科・歯科医療機関においてマスクや衛生材料、消毒液等が不足し、通常の医療提供が困難になっています。
 新型コロナウイルスによる感染は、基本方針に記載された状態よりも、更に広がっている可能性もあります。厚生労働省をはじめとした各省庁は、更なる感染症拡大がおきている可能性を踏まえ、具体的な対応策を急ぐべきです。全国保険医団体連合会は、国民の命と健康を守るために、改めて下記事項の実現を求めます。

1. 新型コロナウイルス検査が必要な方全てに検査ができるよう、検査実施可能件数を飛躍的に増やすための措置を早急に実施すること。
(1) 新型コロナウイルスに感染した疑いのある患者の検査は、全ての医療機関が医師の判断で実施できるように改めること。
(2) 無保険者や在留外国人を含め、感染が疑われるすべての方に、新型コロナウイルスの検査・治療ができるようにすること。
2. 新型コロナウイルスの感染の疑いに限らず、国保資格証明書による受診であっても通常の国保証と同様に現物給付とすること。また、国保資格証明書の交付をやめ、通常の国保証をすべての加入者に届けること。
3. 医科・歯科の第一線医療機関では、マスクや衛生材料、消毒液等が不足しており、通常の医療提供が困難になっていることから、安定供給に向け、関係業界団体への要請を再度行うこと。必要な医薬品・材料が、一般医療機関にも行き渡るよう、必要に応じ、政府備蓄分や自治体備蓄分の放出を行うこと。
4. 新型コロナウイルス治療薬やワクチンの開発・生産を早急に行うこと。医療担当者等へのワクチン接種、治療薬の提供を無償で行うこと。
5. 感染症病床を確保すること。治療体制確保に協力する医療機関等への財政支援を行うこと。患者の入院隔離政策は、医学的妥当性に基づき再検討すること。なお、感染患者が在宅で療養する場合の医療費についても公費負担とすること。
6. 新型コロナウイルスに罹患した疑いのある患者がかかりつけ医を受診する可能性が高くなっていることを考慮し、下記の対策を行うこと。
(1) 新型コロナウイルスの疑いのある患者を検査・治療する医療機関には、マスク、ゴーグル、ガウン等を無償で配布すること。また、他の患者と分離して診察が受けられるために、診療時間や空間の区分等を行う場合への財政支援を行うこと。
(2) 新型コロナウイルス感染患者を診察したことにより、休診せざるを得なくなった場合の休業補償等を行うこと。
(3) 医療従事者の出勤確保のため、保育所や幼稚園、小学校等の一斉休校に対応して独自に医療機関で保育体制を整備した場合の経済的保障を行うこと。
7. 新型コロナウイルスに限らず、感染症対策を強化するため、下記を実施すること。
(1) 必要なワクチンが自己負担なく受けられるよう、国が財政援助を行うこと。
(2) 保健所数を増やし、機能を強化すること。
(3) 公立・公的病院の再編・統合計画を中止し、民間病院も含め、強制的な病床削減を行わないこと。
(4) 一般医療機関における感染症対策強化のため、診療報酬を引き上げること。
(5) 日本においてもCDCを創設し、感染症に対応できる仕組みを構築すること。
8. 新型コロナウイルス感染により、就労制限措置や外出自粛等の協力要請、濃厚接触者に対する保健所からの休業要請に従う場合は、事業者は休業手当を支払うとともに事業者に国が補助を行うこと。自営業者についてもこれに準じて国が補助を行うこと。
9. クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の隔離策の問題点や教訓について検証を行い、人道的立場に立った対策を強化すること。
10. 上記の対策を早急に行えるよう、必要な補正予算を組むこと。

以上